十一月の和菓子 柚餅子 2017-11

初めて食べたのに懐かしい。昼下がりの縁側で、まあお茶でも、と出された柚餅子。十一月の日溜りの庭は明るく暖かだった。雀が何か啄んでいる。それでも太陽は、傾いたと思うと見る間に衰え、やがて黄昏色に。柚餅子は懐かしくやさしいこの夕空のよう。

雲染めてこの秋が逝く柚餅子かな  葛西美津子


十月の和菓子 栗蒸し羊羹 2017-10

切り分けると真ん中に大きな栗、煌々と夜空に浮かぶ月のよう。これは老舗の、とびきりの栗蒸し羊羹。一方その辺で売っている、もっちりした生地にくすんだ栗がちょこんと乗っている、素朴な栗蒸し羊羹も捨てがたい。こちらはうす雲のかかったやさしい月の風情。

また雲に隠るる月や栗羊羹  葛西美津子


九月の和菓子 おはぎ 2017-09

祖母のおはぎはずっしりと重かった。中の丸めたごはんからして大きいのだ。それをまたたっぷりの甘いこし餡が包む。お墓参りの後、祖母の家で叔母や従妹たちとにぎやかに食べた。取り回すお重のおはぎが、秋の日につやつやと輝いていた。遠い日の昼下がり。

ひややかに大きく甘くおはぎかな  葛西美津子