【第6回恋の俳句大賞】

【大賞】
もうゐないあなたがふぶくさくらかな  三玉一郎

長谷川櫂 選

【特選】
会ひにゆく百万本の冬木立  三玉一郎
 冬木立の中を急ぐ人。百万本に迫力がある。

たまには夫にも愛のチョコレート  明日也
 灯台下暗し?大事な人をときどき思い出す。

夏の蝶見てゐる君を見て居りぬ  石上佐知子
 この控えめな感じを忘れないでいたい。男も女も。

もうゐないあなたがふぶくさくらかな  三玉一郎
 花吹雪となって降りしきるあなたの思い出。あなたのかけら。

目つむれば君といた冬2000年(ミレニアム)  永友萌
 十七年前の追憶。冬が切ない。

【入選】
お別れの真昼のクリスマスツリー  鴻池貴光
heavy級 味わう 愛のチョコレート  田村美香
シュプールを描いて彼に真っしぐら  渡部葉子
恋をしてやさしい顔の雪だるま  城内幸江
初雪や隣に君のゐる奇跡  石上佐知子
恋心まだありますかふかし藷  椋本望生
再会は二十五回の冬のあと  矢作輝
桜貝ふたりで海を見ていた日  斉藤真知子
脱ぐために着る夏服をえらんでる  早川高典
花が語りだしたら恋のはじまり  近藤いずみ

趙 栄順選

【特選】
君はいま春のひかりとなり来たる  斉藤真知子
 恋人は春のひかりをまとって。

名前呼ぶバレンタインの日やそつと  三玉一郎
 まだ告白できない人の名か、秘めたる恋心。

初富士や君かたはらにゐればこそ  木下洋子
 愛する人が傍らにいてくれてこその富士のめでたさ。

もうゐないあなたがふぶくさくらかな  三玉一郎
 花吹雪のなかで思う懐かしいひと。桜に宿る力。

好きな人いることが好きラ・フランス  早川高典
 恋に恋する年頃の初々しさ

【入選】
悴みて告げ得ぬ恋のありにけり  川辺酸模
恋心まだありますかふかし藷  椋本望生
見合する気のなささうなラ・フランス  菅原晋也
大胆に薔薇切り取るや恋始め  永井和子
まろび寝て恋を夢見る海鼠かな  川辺酸模
恋あまた思ひ出となり毛糸編む  斉藤真知子
君とならのぼつてみたき雲の峰  長井亜紀
つかまえて私あなたの兎です  小島寿々
花火観る君の瞳の花火見る  矢作輝
花が語りだしたら恋のはじまり  近藤いずみ

【第5回恋の俳句大賞】

【大賞】
虹たちて恋びとたちの地球かな  岡崎陽市

*選評
地球上のいろんな場所に立つ虹と恋人たちが見えてくる。いまさまざまな問題を抱えている地球。それでも地球はこんな星なんだ、こんな星であって欲しいという願いが一句になった。希望をもちつづけることこそが希望。(長谷川櫂)
虹がたちシャガールの恋人たちのような絵が生まれる。夢のある恋の句(趙栄順)

長谷川櫂選
【特選】
虹たちて恋びとたちの地球かな  岡崎陽市
とりあえず暑い暑いと恋はじめ  野上卓
みつ豆や君には君の好きな人  イーブン美奈子
約束がゆつくり歩くはだしかな  三玉一郎
好きだったことは後悔しない 夏  小島寿々
【入選】
この恋も初めての恋さくらんぼ  川辺酸模
見せたうて水着を買うて来たんやで  藤田貞利
なつかしや恋路の果ての日なたぼこ  瀧澤久子
出目金魚一匹連れて告白す  前田みづえ
恋秘めてキャンプファイヤー囲みけり  岡崎陽市
長すぎた春の終りを告げる鐘  光畑勝弘
蛍の帰してくれぬふたりかな  三玉一郎
落ちてみる真夏の恋の落とし穴  藤森荘吉
君となら素顔のままで鳳仙花  斉藤真知子
振られてはまた恋をして苺食う  鎌田彩海
遠花火逢いたい人は一人だけ  城内幸江
不意にくる夕立君の傘にいり   藤田ゆりか
恋の浜敵も味方もサングラス  稲垣雄二

趙栄順選
【特選】
恋心あれば鳴るはず草の笛  武田百合
*恋人のふく草笛はまるで恋を語るよう。何とかして鳴らしたい男心。
虹たちて恋びとたちの地球かな
*虹がたちシャガールの恋人たちのような絵が生まれる。夢のある恋の句。
夢の世の恋に揺るるや草の花  川辺酸模
*現世では叶わなかった恋。草の花となって揺れている。
恋の浜敵も味方もサングラス  稲垣雄二
*夏の浜辺は恋のさや当てが盛ん。サングラスがユーモラス。
うたた寝て恋の水母に刺されけり  川辺酸模
*恋の始まりはいつも唐突。うたた寝をしている場合じゃない。
【入選】
初めてのキス風花の味がした  夏井通江
恋なくば空しき浮世茄子の花  川辺酸模
虹が出て 相合傘と さようなら  比屋根ありさ
君の部屋金魚になりて息ひそめ  小島寿々
少しずつ恋が溶けてく日永かな  小島寿々
したたかに恋にやつれて冷素麺  武田百合
君に会ひ恋するために生まれけり  木下洋子
桑の実や夫は農夫の手もて抱く  夏井通江
恋失せて天下泰平昼寝かな  川辺酸模

【第4回恋の俳句大賞】

【大賞】
君を知りきのふの恋を卒業す  篠原隆子

長谷川櫂 選
【総評】
人類は誕生以来、恋をしてきた。その時間の重みを忘れさせるような新鮮な恋の句を選びました。

【特選】
父となる君にも愛のチョコレート  斉藤真知子
結婚し、やがて子どもが生まれる二人。いつまでも互いに出会ったときのような恋心を抱いている。

君を知りきのふの恋を卒業す  篠原隆子
前の恋を忘れられずにいたのだろう。それが君を一目見たとたん。

セーターの編み目で恋が笑ってる  小島寿々
セーターを頭からかぶって恋人が笑っているのか。それともセーターが笑っているのか。思いをこめてセーターを編んでいるのか。

【入選】
失恋を振ってやったと夏の雲  高橋良邦
出初式私の彼は今梯子  山縣敏夫
霜柱ぎゅうっと踏んで忘れよう  小島寿々
恋なのか失恋なのか冬の蝶  葛岡昭男
熱燗や恋人までの射程距離  浅木ノヱ
墓場まで持ってゆく恋いわし雲  鈴木歌織
恋は今静かな暮らし水仙花  夏井通江
告白の勇気をポインセチアより  織田亮太朗
風花や忘れたわけじゃないのです  小島寿々
手の中に君の手のあり春を待つ  影山

趙栄順 選
【総評】
今回も様々な恋模様をみせていただいた。大賞の句、「君を知りきのふの恋を卒業す」には爽やかさと共に深々とした余韻がある。

【特選】
恋をする君が着てみな花衣  篠原隆子
恋人への手ばなしの讃歌、若さが眩しい。

恋は今静かな暮らし水仙花  夏井通江
恋の季節を遠くした女人か、水仙花の静謐。

恋失せて磯の海鼠となりゐたり  川辺酸模
失恋した男か、海鼠の哀愁と滑稽。

【入選】
告白のあとは朧のふたりかな  三玉一郎
天の川君の処へ泳ぎ切る  山縣敏夫
バレンタインデーまさかの恋が始まりぬ  篠原隆子
吾もまた氷る覚悟の逢瀬かな  三玉一郎
君を知りきのふの恋を卒業す  篠原隆子
蓬莱やいよよこれから共白髪  木下洋子
マフラーと真っ赤な頬と白い息  稲井千紗
秋晴れの今日はあなたをひとりじめ  水野真由美
紫陽花の色にあふるる恋心  吉川弘子
晩婚や秋果大事に育てゆく  山本桃潤

【第3回恋の俳句大賞】
初恋の真つ只中や扇風機  森篤史

恋にはさまざまな恋がありますが、大賞となると、爽やかでかつ大柄な感じが必要です。その点、この句はまさにぴったりの句でした。(長谷川櫂)

恋の熱を冷ます扇風機ではあるまい。風の爽やかさ、勢い…。初恋ならでは。(趙栄順)

*趙栄順選
【特選】
初恋や二人で覗く蝌蚪の国  山本桃潤
これも初恋。蝌蚪の国はメルヘンではない。先の見えない恋に対する漠とした怖れ、不安。
あんなやつまつぴらごめんさくらんぼ  北側松太
「まつぴらごめん」と言いながら憎みきれないあいつ。いじらしい女(男?)心。
恋しさと寒さは背中からどつと  佐々木まき
「背中からどつと」に恋の切実さが感じられる。
【入選】
ほかほかの鯛焼一つほどの恋  北側松太
こんな恋なら長続きしそう。
唇の好きと動けり夏の海  川辺酸模
波の音が肝心な言葉を消していく。
桜貝拾うて恋となりにけり  北側松太
桜貝の魔法?
ハンカチに昔の恋の残りゐる  和田康
慎み深い昭和の恋。
掬っても掬っても恋落ちる夏  小島寿々
恋は厄介。どうにも成就出来ない恋。
抽斗の奥の恋文遠花火  小島寿々
追憶の恋。遠花火が思い出させる。
罪深き恋となりたる扇かな  北側松太
白秋でしょうか。それとも立原正秋?扇が意味深。
駅で逢ひ駅で別るる恋いくつ  佐々木まき
渋谷、新宿、東京駅?都会のドライな恋模様。
すき焼きやこれからもつと君を知る  今野浮儚
プロポーズの殺し文句。湯豆腐じゃだめ。
この恋の行方見えたり夕端居  佐々木まき
恋をすると目がかすむ。でもある時ふと視力がもどる。見えてきてしまう夕端居。

*長谷川櫂選
【特選】
初恋の真つ只中や扇風機  森篤史
ハンモック寝そべり恋を待っている  小島寿々
ただ恋とありますが、次の恋にちがいありません。恋を失くしてあせるでもなく、あわてるでもなく、気怠そうに寝そべって余裕が感じられます。
蜜豆にきのうの恋がかくれんぼ  小島寿々
蜜豆に寒天や蜜柑やサクランボや豆が入っている。そのなかに過ぎ去った恋も隠れていそう。「きのうの恋」という見えないものを見えるように詠んでいます。
【入選】
八月三十二日へラブレター  織田亮太朗
夏の果破れた恋はピザに入れ  小島寿々
ほかほかの鯛焼一つほどの恋  北側松太
なんとなく恋愛上手ところてん  和田 康
あんなやつまつぴらごめんさくらんぼ  北側松太
失恋の身に追討ちの暑気あたり  北側松太
恋の果て妻のお襁褓を替えて夏  山本桃潤
すき焼きやこれからもつと君を知る  今野浮儚
香水や二度目の恋にある余裕  森篤史

【第2回恋の俳句大賞】
告白は直球勝負蝉時雨        佐藤日田路

<作者のコメント>
大賞なるもの、はじめていただきました。メールでのお知らせに、驚くとともに、心から嬉しく思いました。 「亜流里(あるさと)」という地元の句会で俳句をはじめ、10年になります。 今回の句は、基本に返り、素直に詠ませていただきました。気持ちの伝わる俳句を目指し、今後とも励みたいと思います。

*長谷川櫂選
【特選】
初恋の人を検索冬ごもり       藤岡美恵子
その人はいまどうしているか、ちょっと気になるのだ。

告白は直球勝負蝉時雨        佐藤日田路
まさに直球の句。

好きの文字ポケットに突っ込んで冬  小島寿々
少年の面影がある。

【入選】
恋をせしこともはるかや目刺焼く   斉藤真知子
逃げ水を追ふやうな恋もう二年    辻 雅宏
それつてプロポーズなのかき氷    北側松太
初恋の二人はピンクのこんぺいとう  小野田里緒
隣あひあたる焚火に割り込まれ    佐々木まき
百万遍愛を唱える牛蛙        佐藤日田路
マスクして恋の瞳となりにけり    山本桃潤
恋の日が輝いてゐる初暦       篠原隆子
新雪にシュプール描き恋の日よ    矢野京子
女郎蜘蛛恋の二人に降りて来し    北側松太

*趙栄順選
【特選】
湯豆腐の湯気に隠れて恋の顔     今野浮儚
恋する人の顏は、単純ではない。ときに幸せが、ときに苦悩が、あるいは鬱屈が見え隠れする。この「恋の顏」。含羞を知る中年の男性ではないかと想像するが、如何?「湯豆腐の湯気」がよく働いて、この句に深みを与えている。

君はもう恋をしてゐる桜餅      石川桃瑪
この断定は、恋人に対する告白か、あるいは暗示か。逃げも隠れもない、体当たりの清々しさが好ましい。「桜餅」が、この句に清潔感と若々しさを添えている。

結婚といふお雑煮のやはらかさ    三玉一郎
この句に、恋の生々しさはない。だが、結婚が恋を育て、熟成させた結果だとすれば、夫婦の長い歳月が育てた結婚の形も自ずと恋の名残を留めている筈だ。「お雑煮のやわらかさ」。実感であろう。

【入選】
それつてプロポーズなのかき氷    北側松太
雪つぶて弾けはじまる二人かな    山中澄江
すれ違う階段バレンタインデー    宮崎江美
春愁のひとつに待つといふことも   豊田喜久子
冷やっこ長女と恋の話など      山本新
告白は直球勝負蝉時雨        佐藤日田路
恋をしてあらほろ苦の木の芽和    北側松太
ふらここに揺れゐてしづか恋心    北側松太
まつすぐに胸に飛び込む冬帽子    今野浮儚
春立つや妻を名前で呼んでみる    村松二本

【第1回恋の俳句大賞】
白玉や次の恋までひと休み      高角みつこ
◆次点
恋ひとつ香水瓶に封印す       持田公子
誰よりも君まぶしくてサングラス   趙栄順
◆入選句
これがかの白馬の王子ちゃんちゃんこ 佐々木まき
老いらくの恋の始まる日向ぼこ    横山幸子
満天の星いつせいに飛んで恋     篠原隆子
外套に炎包みて逢いにゆく      神谷宣行
初恋や木莓の菓を摘むごとく     増田竹廣
バレンタインデー回るや大観覧車   飛岡光枝
ひれゆれて恋の金魚となりにけり   飛岡光枝
夏椿誰も知らない恋をして      飛岡光枝
老いてなほ胸ときめかす一賀状    豊田喜久子
恋の日やともに白髪となりてをり   矢野京子
百戦の恋の果てなる羽抜鶏      萬燈ゆき
ポケットからぶつきら棒に恋のチョコ 北側松太
水蜜桃愛のごとくに熟しけり     趙栄順