燕の巣(つばめのす) 三春
【子季語】
巣燕/巣乙鳥
【解説】
燕は比較的人の集まるところ、人家の軒下、橋の下などに泥や藁で巣を作る。人の集まるところには蛇や烏などの外敵が近づかないといわれる。前年の古巣に土をつけ足して作ることもある。巣ができるとそこで卵を産み、孵化させる。
【科学的見解】
ツバメは、ツバメ科の野鳥で、日本では主に九州以北の地域で夏鳥として繁殖している。近縁種としては、コシアカツバメやイワツバメ等が知られており、本種と比較して前者は燕尾がより長く、後者は燕尾がより短いところが特徴である。本種は、春先南方から移動してきた後、粘土質の泥とイネ科の枯葉や茎を混ぜ合わせて椀型の巣を軒下等の壁面に張り付ける。そのため、巣作りには水田の土が最適であるが、近年都市部付近の水田の減少やアスファルト舗装の拡大で営巣に適した材料が不足している。本種にとっては、集落が存在し、かつ田園風景が残された里山的な環境が巣材や餌が豊富に存在するため、繁殖場所として最適地と言える。(藤吉正明記)
【例句】
わりなしやつばめ巣つくる塔の前
蕪村「新五子稿」
巣を守る燕のはらの白さかな
太祇「太祇句選」
巣乙鳥の下に火をたく雨夜かな
白雄「白雄句集」
庵室や竹のたる木に燕の巣
松瀬青々「妻木」
巣燕の悲しみ合ふを人知らず
河東碧梧桐「碧梧桐句集」