茎立(くくたち) 三春
【子季語】
くきたち
【解説】
三、四月頃、大根や蕪、菜の類が茎を伸ばす事。その伸びた茎を薹という。一般に茎立した野菜は潤いがなく味が落ちる。
【科学的見解】
アブラナ科の多くは、冬季に風や寒さから身を守るため、葉を放射状に伸ばし、地面に張り付いたロゼット形をしている。その後、春季になり暖かくなると、開花及び結実のため、茎を伸ばし、受粉や種子散布の効率を高める戦術をとる。この茎の伸長を茎立と呼ぶが、茎の伸長や開花・結実には多くのエネルギーが必要なために、それまでに貯えた水や栄養を使用する。ダイコンやカブのような貯蔵器官を食用にする野菜は、茎立が起こると水分や栄養、食味が低下し、食用には向かなくなる。(藤吉正明記)
【例句】
くゝ立や縄の付たる捨氷
嘯山「葎亭句集」
茎立に翌飛ぶ蝶のすがりけり
大江丸「俳懺悔」
のつ切つて庵の草も茎立ちぬ
一茶「七番日記」