瓢の実(ひょんのみ) 晩秋
【子季語】
ひよん/蚊母樹の実/蚊母樹/蚊子木/瓢の笛
【解説】
実といわれているが果実ではなく、マンサク科のイスノキの葉に生じる虫瘤をいう。大きさは鶉の卵くらいになる。虫が出たあと穴に口を当てて吹くと、ひょうひょうと音が出る。
【科学的見解】
イスノキは、マンサク科イスノキ属の常緑高木で、本州西南部から沖縄までの暖地林内に生育する。本種は、樹勢が強く、刈り込まれると枝や葉が密に出ることから、その特性を活かし生垣によく利用されている。別名としてヒョンノキとも呼ばれている。本種は、枝や葉にアブラムシ類が寄生することが多く、寄生されると細胞分裂に異常をきたし、丸いこぶのような塊ができる。その塊は、虫こぶ(虫えい)と呼ばれ、中はアブラムシ類の棲み処となる。本種に寄生するアブラムシ類は、イスノフシアブラムシ等複数種が知られており、こぶの中で個体数を増やしたのち、穴をあけ外へ飛び去っていなくなる。そのいなくなった虫こぶが笛として子供の遊びに使われていた。(藤吉正明記)
【例句】
ひよんの実や聖訪はるる片折戸
文川「新類題発句集」