鹿の袋角(しかのふくろづの) 初夏
【子季語】
袋角/鹿の若角/鹿茸
【解説】
鹿の角は毎年生え変わる。春に落ちたあと、角座から新しい角が生まれてくる。皮膚で包まれた柔らかい角であり、形が袋に似ているので、その名がある。
シカ(ニホンジカ)は、ウシ目(偶蹄目)シカ科の哺乳類で、日本に生息する種は北海道のエゾジカから沖縄のケラマジカまで六亜種に分類されている。
これらのシカは、雄のみ角を持ち、毎年春に角を落とした後、新しい角と入れ替わる。角を落とした後は、夏からまた新しい角が生み出され、先端は丸く袋で覆われた形状となるため、硬くなっていない成長途中の角のことを袋角と呼んでいる。袋角が成長し、硬化してくると、袋角の表面にある皮(表皮)を剥がすために、袋角を樹木の幹などに押し当てる角研ぎを行うようになる。角研ぎを行った場所は、樹木の剥がれた樹皮が散在し、また幹に傷などが残るため、痕跡(フィールドサイン)となる。角の表皮が剥がれて完全に硬くなった角を枯角と呼ぶ。(藤吉正明記)
【例句】
二俣にわかれ初けり鹿の角
芭蕉「泊船集」
鹿の角先づ一節の別れかな
芭蕉「笈の小文」
袖かけて折らさじ鹿の袋角
園女「其袋」