蟇(ひきがえる、ひきがへる)三夏
【子季語】
蝦蟇、がまがへる、蟾、蟾蜍
【解説】
大型のカエル。竹藪や林に棲み、普段はあまり水に入らない。冬眠し、夏になると活発に動き出す。「ひき」「がまがえる」「がま」とも呼ばれ、蟇、蝦蟇、蝦、蟾蜍などの漢字をあてる。
【来歴】
『山の井』(正保5年、1648年)に所出。
【実証的見解】
カエル目ヒキガエル科のカエルの総称をいう。日本ではニホンヒキガエルが多く、本州、四国、九州の山野に棲息する。体長は十~十五センチくらい。背中にいぼいぼがあり、目の後に耳腺と呼ばれる分泌腺を持つ。動きは緩慢で跳躍力は小さくおもに歩行で移動する。蜘蛛や昆虫、ミミズなどを捕食し、冬は冬眠する。春、沼や池に十メートル以上にもなる紐状の卵を産む。
【例句】
這ひ出でよ飼屋が下の蟾の声
芭蕉「奥の細道」
憂き時は蟇の遠音も雨夜かな
曾良「蛙合」
月の句を吐いてへらさん蟾の腹
蕪村「蕪村文集」
雲を吐く口つきしたり蟇
一茶「おらが春」
額散るや瞼瞬く蟇
島村元「島村元句集」
蟾蜍長子家去る由もなし
中村草田男「長子」
蟇誰かものいへ声かぎり
加藤楸邨「颱風眼」
だぶだぶの皮のなかなる蟇
長谷川櫂「天球」