葭切(よしきり)三夏
【子季語】
行々子、葭雀、大葭切、小葭切、蘆雀、麦熟らし
【解説】
夏、水辺の葦の茎に止まって、「ぎょっぎょっ」と大きな声で鳴く鳥。鳴声から行々子とも呼ばれる。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【実証的見解】
スズメ目ヒタキ科の夏鳥。五月ころ南方から飛来して日本国じゅうの水辺の葦原で営巣する。大葭切と小葭切がいるが俳句で「葭切」といえば大葭切をさす。体長は十八センチくらい。全体的に灰褐色で腹部は白っぽい。口の中が赤く、さえずるとこの色が目立つ。郭公は葭切の巣に托卵する。
【例句】
能なしの眠ぶたし我を行々子
芭蕉「嵯峨日記」
よしきりや汐さす川の水遅し
几董「晋明集二稿」
よしきりの鳴き止むかたや筑波山
大江丸「俳懺悔」
行々子大河はしんと流れけり
一茶「九番日記」
夕潮の満ちわたりけり葭すゞめ
日野草城「青芝」
一渡しすれば日出でつ行々子
大須賀乙字「炬火」
葭切や晒布に重石拾ひ置く
高田蝶衣「青垣山」
葭切や文王魚籠をのぞき去る
永田青嵐「同人句集」
よしきりの現はれて啼く青嵐
臼田亜浪「定本亜浪句集」
月やさし葭切葭に寝しづまり
松本たかし「石塊」
喜雀ふたりにされてゐたりけり
石田波郷「風切」