空蝉(うつせみ) 晩夏
【子季語】
蝉の殻、蝉の抜殻、蝉のもぬけ
【関連季語】
蝉、蝉生る
【解説】
蝉のぬけ殻のこと。もともと「現し身」「現せ身」で、生身の人間をさしたが、のちに、「空せ身」空しいこの身、魂のぬけ殻という反対の意味に転じた。これが、「空蝉」蝉のぬけ殻のイメージと重なった。
【来歴】
『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。
【文学での言及】
空蝉の殻は木ごとに留(とど)むれど魂の行くへを見ぬぞ悲しき 読人知らず『古今集』
【実証的見解】
樹皮の中で孵化した後、蝉の幼虫は地中で樹木の根から栄養分を吸って成長する。三年から十年ほど地中で過ごして蛹となり、その後地表に出て成虫となる。
【例句】
梢よりあだに落ちけり蝉のから
芭蕉「六百番発句会」
空蝉のふんばつて居て壊はれけり
前田普羅「新訂普羅句集」
うつせみをとればこぼれぬ松の膚
日野草城「花氷」
空蝉にしてやはらかく草つかむ
長谷川櫂「天球」
蝉の殻うすうすと風抜けにけり
高田正子「花実」