東風(こち)三春
【子季語】
朝東風、夕東風、強東風、雲雀東風、あめ東風、いなだ東風、鰆東風、梅東風、桜東風
【関連季語】
春の風
【解説】
春に吹く東風。冬型の西高東低の気圧配置が崩れ、太平洋から大陸へ吹く。温かい風で雪を解かし、梅の花を咲かせるが、ときに、強風となって時化を呼ぶ風でもある。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花はるじなしとて春を忘るな 菅原道真『拾遺集』
【例句】
あち東風や面々さばき柳髪
芭蕉「続山の井」
東風吹くと語りもぞ行く主と従者
太祇「新五子稿」
東風うけて川添ゆくや久しぶり
召波「春泥発句集」
のうれんに東風吹くいせの出店かな
蕪村「蕪村句集」
河内路や東風吹送る巫女が袖
蕪村「蕪村句集」
亀の甲並べて東風に吹かれけり
一茶「七番日記」
東風吹くや山一ぱいの雲の影
夏目漱石「漱石全集」
東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪
杉田久女「杉田久女句集」
石段を東風ごうごうと本門寺
川端茅舎「華厳」
東風の波がぶりがぶりと杭を越え
星野立子「鎌倉」
東風吹かば西へ東へ帆掛け舟
長谷川櫂「新年」