桜餅(さくらもち) 晩春
【解説】
一般には、塩漬けの桜の葉で包んだ餡入りの餅である。江戸時代、向島長命寺の門番山本新六が隅田川の土手の桜の葉を塩漬けにし、その葉を使って桜餅を作ったのが最初とされる。江戸で生まれた菓子のひとつだが、関東は小麦粉地を焼いたもので餡を包み、関西は道明寺糒(ほしい・餅米を蒸し、乾燥させ、引きわったもの)の生地で包んだものが主流。薄い塩味に桜葉のほのかな移り香が楽しめる。葉はおもに塩漬けにしたオオシマザクラの葉を用いる。葉ごと食べるか、葉を取って食べるか、話題になることが多い。
【実証的見解】
江戸時代、向島長命寺の門番山本新六が隅田川の土手の桜の葉を塩漬けにし、その葉を使って桜餅を作ったのが最初とされる。現在では、小麦粉の生地を薄焼きにし、餡を包みさらに三枚の桜の葉でつつんでいる。一方、上方風の道明寺の桜餅は、餅米をふかして乾燥させ、それを粗く挽いた粒状の道明寺粉を用いる。葉はどちらも、塩漬けにしたオオシマザクラの葉を用いる。
【例句】
雨水は溝を走れり桜餅
前田普羅「普羅句集」
さくら餅うちかさなりてふくよかに
日野草城「花氷」
雨を来し人ひとくさし桜餅
原石鼎「花影」
桜餅人の寒さに匂ひでし
渡辺水巴「水巴句集」
桜餅闇のかなたの河明り
石田波郷
あすよりは妻のほとりや桜餅
長谷川櫂「蓬莱」