桜貝(さくらがい、さくらがひ)三春
【子季語】
花貝、紅貝
【解説】
淡い紅色の可憐な貝。波打ち際に桜の花びらのように漂着する。古くから歌にも詠まれてきた。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
吹く風に花咲く波のをるたびに桜貝寄る三島江の浦 西行『夫木和歌抄』
【実証的見解】
桜貝はニッコウガイ科の二枚貝で北海道から九州にかけて日本全国の沿岸の砂泥の中にもぐって棲息する。浜辺によく打ち上げられる貝で、大きさは二センチから三センチくらい。形は楕円に近い扇形で薄い扁平。光沢があり、その名のように桜色をしている。貝殻が美しいので貝殻細工に利用される。
【例句】
口あくは花の笑かはさくら貝
弘永「毛吹草」
二三枚重ねてうすし櫻貝
松本たかし「松本たかし句集」
ひく波のあと美しや櫻貝
松本たかし「野守」
眼あてて海が透くなり櫻貝
松本たかし「石魂」
ちりがみに包みて透けて桜貝
長谷川櫂「果実」