心太(ところてん)三夏
【子季語】
心天、こころぶと、こころてん、心太突き
【解説】
天草を煮て寒天質を取り出し、冷やし固めたものを心太突きで突き出し、酢・醤油・蜜などで食べる(一般に関西は蜜・関西は酢醤油)。井戸水、山水で冷やした心太を暑い屋外で食べるのは夏の醍醐味のひとつ。江戸時代には街中で、心太を空中に突き上げ、皿で受け止めるなど、曲突きをするところてん売りがいて、話題を集めた。
【例句】
清滝の水汲ませてやところてん
芭蕉「泊船集」
巡礼のよる木のもとやところてん
其角「桃の実」
白雨に躍り出でけりところてん
許六「浮世の北」
ところてん逆しまに銀河三千尺
蕪村「蕪村句集」
水の中へ銭遣りけらし心太
太祗「太祗句選」
喰物に笠もぬがずよ心太
白雄「在し世語」
あさら井や小魚と遊ぶ心太
一茶「嘉永版句集」
旅人や山に腰かけて心太
一茶「発句集」
柱噛む馬を叱りつ心太
佐藤紅緑「花紅柳緑」
ところてん煙のごとく沈みをり
日野草城「花氷」
心太水に沈みて無きごとし
長谷川櫂「蓬莱」
くみおきて水に木の香や心太
高田正子「花実」