昼寝(ひるね)三夏
【子季語】
午睡、昼寝覚、昼寝起、昼寝人、三尺寝
【解説】
夏に仮眠をとること。夏は寝不足や暑さによる食欲不振などで衰弱することが多く、回復のために昼寝をする。弁当を終えた仕事師などが、ちょっとした日陰を選んで横になっているのは三尺寝。日陰が三尺ほど移る間の短い眠りであるところからこういわれる。
【来歴】
『季寄大全』(享和三年、1803年)に所出。
【文学での言及】
『邯鄲の夢』(中国唐代の小説『枕中記』の故事)
【例句】
ひやひやと壁をふまえて昼寝哉
芭蕉「笈日記」
昼寝して手の動きやむ団扇かな
杉風「続猿蓑」
親方の見ぬふりされし昼寝かな
一茶「享和句帖」
糊ごはな帷子かぶる昼寝かな
惟然「続猿蓑」
足しびれて邯鄲の昼寝夢覚めぬ
正岡子規「子規句集」
松の木に庭師来て居り昼寝覚
前田普羅「普羅句集」
屋根瓦ずれ落ちんとして午寝かな
渡辺水巴「水巴句集」
探しても妻の居らざる昼寝覚
日野草城「人生の午後」
昼寝覚うつしみの空あをあをと
川端茅舎「川端茅舎句集」
魂の抜けはててゐる昼寝かな
星野立子「實生」
松風に近江商人昼寝かな
村上鬼城「鬼城句集」
すぐ覚めし昼寝の夢に鯉の髭
森澄雄「鯉素」
禅僧とならぶ仔猫の昼寝かな
長谷川櫂「蓬莱」