桐の花(きりのはな) 初夏
【子季語】
花桐
【関連季語】
桐一葉
【解説】
初夏、淡い紫色の花を鈴なりに咲かせる。葉が出る前に咲くので遠くからでも目立つ、清楚な感じの花で、畑や庭、山地などに見られる。夏の訪れを感じさせる花である。
【来歴】
『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。
【科学的見解】
桐(キリ)は、ノウゼンカズラ科キリ属の中国原産の落葉高木。畑などで栽培されるほか山地にも自生する。高さは十五メートルくらいになり、卵形の大きな葉は対生する。五月ころ枝先に円錐花序をのばし、紫色の筒状の花を多数つける。花が衰え始めると、長い柄を持った葉が出てくる。キリの材は、狂いが少なく、比重が軽いため、箪笥、下駄、琴材などに利用される。(藤吉正明記)
【例句】
殿つくりならびてゆゝし桐のはな
其角「五元集」
もろとりのをとなひ低し桐の花
路通「一字幽闌集」
簷(のき)に啼く巣立鴉や桐の花
也有「垤集」
桐の花寺は桂の町はづれ
暁台「暁台句集」
酒桶の背中ほす日や桐の花
蓼太「蓼太句集初編」
花桐や二条わたりの夕月夜
内藤鳴雪「新俳句」
花桐やなほ古りまされ妙義町
渡辺水巴「水巴句集」
花桐や重ね伏せたる一位笠
前田普羅「普羅句集」
どこからも見えて水田の桐の花
長谷川櫂「果実」