罌粟の花(けしのはな) 初夏
【子季語】
芥子の花、花罌粟、薊罌粟、白罌
【関連季語】
罌粟坊主
【解説】
未熟の果実から阿片やモルヒネを作る禁断の花。五月頃、茎の頂に大輪の花を一つつける。花の色は鮮やかで真紅や純白などがある。古くは、薬用や観賞用に植えられたが、今では栽培が禁止されている。ふつう、「罌粟」として詠まれるのは、ヒナゲシが多い。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
【科学的見解】
罌粟は、ケシ科ケシ属の越年草。西アジア、東南ヨーロッパ原産で、観賞用や薬用に栽培される。五月ころ、五十センチほどの茎の頂きに紅、紫、白、絞りなどの花を咲かせる。花径は十センチくらいの一日花である。芥子坊主といわれる未熟の果実に傷をつけ、そこから採れる樹脂が阿片の原料となる。公園や庭先などで観賞用に栽培されているものは、麻薬成分を含まない種である。近年では、植栽されたものの一部が市街地や道端に逸出し、分布を広げている。代表的な種としては、ヒナゲシやナガミヒナゲシなどが存在する。(藤吉正明記)
【例句】
白芥子や時雨の花の咲きつらん
芭蕉「鵲尾冠」
海士の顔先づ見らるゝやけしの花
芭蕉「笈の小文」
白げしに羽もぐ蝶の形見哉
芭蕉「甲子吟行」
散るときの心やすさよ芥子の花
越人「猿蓑」
一つ家や十本ばかり芥子の花
百明「故人五百題」
けしの花見てゐるうちは散らざりし
白雄「白雄句集」
僧になる子の美しや芥子の花
一茶「九番日記」