麦(むぎ) 初夏
【子季語】
大麦、小麦、黒麦、麦の穂、麦畑、麦生、麦の波、穂麦、熟れ麦
【関連季語】
青麦、麦の秋、麦蒔き、麦の花、麦扱き、麦踏、麦打、麦刈、烏麦、麦の芽
【解説】
五穀の一つで、初夏、黄金色に稔る。小麦、大麦、ライ麦、燕麦などの種類があり、パン、ビール、焼酎、醤油などの原料になる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。【文学での言及】
山賤のはたに刈り干す麦の穂のくだけてものを思ふころかな 曾根好忠『曾丹集』
【科学的見解】
小麦(コムギ)、大麦(オオムギ)、ライ麦(ライムギ)、燕麦(エンバク)などの麦類はイネ科の越年草(冬型一年草)で、中央、西アジアが原産。日本には三、四世紀ころに伝わったとされる。晩秋から初冬に蒔かれ、冬を越して晩春には青々とした穂が出る。これが穂麦で、初夏に黄熟し刈り取られる。世界的に栽培される麦類は大麦、小麦、ライ麦、燕麦で、世界の穀物生産の半分近くになる。(藤吉正明記)
【例句】
行駒の麦に慰むやどり哉
芭蕉「甲子吟行」
麦の穂を便につかむ別かな
芭蕉「有礎海」
いざともに穂麦喰はん草枕
芭蕉「野ざらし紀行」
山の月雨なき麦を照らしけり
臼田亜浪「定本亜浪句集」
麦車馬におくれて動き出づ
芝不器男「不器男全句集」