身に入む(みにしむ)三秋
【子季語】
身に沁む
【解説】
秋の冷気やものさびしさが、身に深くしみるように感じること。和歌では「身にしむ風」「身にしむ秋」などと秋の冷やかさとともにつのるものさびしさをあらわす言葉だった。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
月はよしはげしき風の音さへぞ身にしむばかり秋はかなしき 斎院中務『後拾遺集』
風の音の身にしむばかり聞ゆるは我身に秋や近くなるらん よみ人知らず『後拾遺集』
秋ふくはいかなる色の風なれば身にしむばかりあはれなるらん 和泉式部 『詞花集』
夕されば野べの秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里 藤原俊成『千載集』
秋風は身にしかばかり吹きにけり今や打つらむ昧がさごろも 藤原輔尹『新古今集』
【例句】
野ざらしを心に風のしむ身かな
芭蕉「野ざらし紀行」
鳩の声身に入みわたる岩戸哉
芭蕉「漆島」
身にしむや宵暁の舟じめり
其角「姿かな」
身にしむや亡き妻の櫛を閨に踏む
蕪村「蕪村句集」