秋の声(あきのこえ、あきのこゑ)三秋
【子季語】
秋声、秋の音
【解説】
物音がさやかに聞こえること。風やせせらぎなど自然の音ともかぎらず、人のたてる物音ともかぎらない。具体的な音ばかりでなく、心の中に響いて来る秋の気配もまた、秋の声である。
【来歴】
『改正月令博物筌』(文化5年、1808年)に所出。
【文学での言及】
水茎の中にのこれる滝のおといとしも寒き秋のこゑかな 大中臣能宣『新古今集』
五十鈴川そらやまだきに秋のこゑしたつ岩ねの松の夕風 大中臣明親『新古今集』
荻の葉にかはりし風の秋の声やがて野分の露くだくなり 藤原定家『玉葉集』
【例句】
帛を裂く琵琶の流れや秋の声
蕪村「蕪村文集」
擲てば瓦もかなし秋のこゑ
蓼太「蓼太句集」
さゞ浪やあやしき迄に秋の声
嘯山「葎亭句集」
秋声や石ころ二つ寄るところ
村上鬼城「鬼城句集」
癒えたりし胸の奥より秋の声
長谷川櫂「蓬莱」