柿(かき)晩秋
【子季語】
渋柿、甘柿、蜂屋柿、見不知柿、似柿、樽柿、ころ柿、百目柿、富有柿、御所柿、禅寺丸、次郎柿、伽羅柿、西条柿、会津見知らず、平核無、山柿、柿膾、柿の秋、柿店、柿の蔕落
【解説】
カキノキ科の落葉高木。東アジア温帯地方固有の植物で、果実を食用にする。かたい葉は光沢がある。雌雄同株。富有、御所、次郎柿などの甘柿は熟すると黄色が赤くなりそのまま食する。渋柿は、干し柿にすると甘くなる。青い実の渋柿からは、防水防腐に使われる「柿渋」がとれる。
【科学的見解】
柿の木(カキノキ)は、北海道をのぞく日本全土に分布する。高さは十メートルくらいになる。六月ころ葉腋に壺型の黄緑色の花をつける。雌雄同株で、雌花は雄花より大きい。互生する葉は、十センチくらいの楕円形または卵形で、表面には光沢がある。園芸品種が多数存在し、果実は甘いものと渋いものがある。カキノキは、日本の数少ない在来果樹の一つである。(藤吉正明記)
【例句】
里古りて柿の木持たぬ家もなし
芭蕉「蕉翁句集」
祖父(おほぢ)親まごの栄や柿みかむ(蜜柑)
芭蕉「堅田集」
蔕おちの柿のおときく深山かな
素堂「素堂家集」
柿ぬしや梢は近き嵐山
去来「猿蓑」
別るるや柿喰ひながら坂の上
惟然「続猿蓑」
柿売の旅寝は寒し柿の側
太祗「太祗句選」
嵯峨近う柿四五本の主かな
万古「俳諧新選」
渋かろか知らねど柿の初ちぎり
千代女「続近世畸人伝」
渋いとこ母が喰ひけり山の柿
一茶「句帖」
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
正岡子規「獺祭句帖抄」
三千の俳句を閲し柿二つ
正岡子規「子規句集」
よろよろと棹がのぼりて柿挟む
高浜虚子「五百五十句」
釣鐘のなかの月日も柿の秋
飯田龍太「春の道」
存念のいろ定まれる山の柿
飯田龍太「今昔」
柿食ふや命あまさず生きよの語
石田波郷「酒中花」
昨日より今日むさぼりぬ次郎柿
石田波郷「酒中花以降」
丸くして四角なるもの富有柿
長谷川櫂「初雁」