蜩(ひぐらし) 初秋
【子季語】
日暮、茅蜩、かなかな
【解説】
明け方や日暮に澄んだ鈴を振るような声でカナカナと鳴くのでかなかなともいう。未明や薄暮の微妙な光に反応し鳴き始める。鳴き声には哀れさがあり人の心に染みるようである。
【例句】
日ぐらしや盆も過ぎ行く墓の松
蝶夢「草根発句集」
日ぐらしや山田を落る水の音
諷竹「駒掫」
蜩のおどろき啼くや朝ぼらけ
蕪村「夜半叟句集」
日ぐらしや急に明るき湖の方
一茶「日記断層」
蜩や机を圧す椎の影
正岡子規「春夏秋冬」
人の世の悲し悲しと蜩が
高浜虚子「七百五十句」
蜩のなき代りしははるかかな
中村草田男「長子」
かなかなに母子の幮のすきとほり
石田波郷「鶴の眼」
まろび寝によきかなかなの廊下かな
長谷川櫂「果実」
蜩や母目醒めれば胎の子も
高田正子「玩具」