桔梗(ききょう、ききやう)初秋
【子季語】
きちこう、おかととき、ありのひふきぐさ、一重草
【解説】
きりっとした輪郭、折り目ただしい花の姿には凛とした風情がある。紫を主とするが、白桔梗にも捨てがたい魅力があろう。山上憶良が詠った朝顔は桔梗のことである。秋の七草のひとつ。
【科学的見解】
桔梗(キキョウ)は、キキョウ科キキョウ属の多年草で、北海道から九州まで分布している。花期は、七月から八月であり、釣鐘型の大きな花をつける。オミナエシ同様、生育環境としての良好な草地が減少していることから、急激に個体数を減少ささせ、現在野生のものは滅危惧種に指定されている。しかし、園芸店には種子や苗が販売されているため、公園や庭先などで栽培されているものを見ることができる。(藤吉正明記)
【例句】
きちかうの露にも濡れよ鞠袴
凡兆「井華集」
桔梗咲て何れも花のいそぎ哉
暁台「暁台句集」
桔梗の花咲時ほんと言ひさうな
千代尼「千代尼句集」
紫のふつとふくらむ桔梗かな
正岡子規「子規句集」
女三十桔梗の花に似たるあり
松瀬青々「倦鳥」
桔梗一輪死なばゆく手の道通る
飯田龍太「麓の人」
切妻の家たちならぶ桔梗かな
長谷川櫂「初雁」