亥の子(いのこ、ゐのこ)初冬
【子季語】
亥の日祭、亥の神祭、亥の子餅、玄猪、亥の子石、おなりきり、亥の子突
【解説】
旧暦十月の亥の日の亥の刻には亥の子餅を食べ、無病息災が願われてきた。その歴史は古く、平安時代には行事食とされ、『源氏物語』にも登場する。江戸時代には各地に広まり、猪が多産であることから、豊年や子孫繁栄を願う意味も込められるようになった。猪が火伏の神の愛宕神社のつかいであることから、十一月の亥の日には炬燵や火鉢を出す習慣があり、茶の湯の世界でも、炉開きの菓子として亥の子餅を用意することがある。時代や階層によって、色かたちもさまざまな亥の子餅が作られてきたが、現在ではおはぎのような餡ころ餅が多い。
【例句】
しら箸の夜のちぎりや亥の子餅
宗因「洗濯物」
亥猪とや祖父のうたふ枝折萩
其角「五元集」
洗菜に朝日の寒き豕子かな
惟然「薦獅子集」
いの子ともしらで餅屋に旅寝かな
凡兆「土芳宛書簡」
人の来て言ねばしらぬ猪子哉
太祗「太祗句選」
故郷の大根うまき亥子かな
正岡子規「子規句集」
亥の子餅いづこの神か知らねども
長谷川櫂「初雁」