熊(くま)三冬
【子季語】
羆、赤熊、白熊、黒熊、月輪熊、北極熊
【解説】
日本で見かけるのは、ツキノワグマとヒグマの二種類である。ツキノワグマはおもに本州に棲む。喉に三日月形の白斑をもち、木登りが上手である。ヒグマはおもに北海道に棲み、大型で獰猛である。
【科学的見解】
日本に生息するクマ類はニホンツキノワグマとエゾヒグマである。共にネコ目(食肉目)クマ科の哺乳類であり、大陸に生息するツキノワグマとヒグマの亜種とされている。そのため、大陸の種と区別するために「ニホン」や「エゾ」という地域・国名が付けられている。
ニホンツキノワグマは、東北から中国地方までに分布しており、山地の落葉広葉樹林で生息している。かつては九州や四国にも存在していた記録があるが、近年では目撃事例がなく絶滅もしくは絶滅寸前と考えられている。体色は全身黒色であるが、胸の白い三日月模様が特徴である。昼間に活動をする傾向であるが、夜間に行動する場合もある。食性としては、植物の新芽や木の実・果実が中心であるが、小型動物や大型動物の死骸なども食べることがある。樹上の果実などを食べるときには木に登り、食べ終わった枝を尻に敷く性質がある。そのため、樹の上に枯れ枝が密になった部分が残り、それをクマ棚と呼んで痕跡(フィールドサイン)の一つになっている。冬季には餌が少なくなるため、大木の樹洞や岩穴などで越冬する。
一方、エゾヒグマは、北海道のみに分布し、山地から高山までの原野で生息している。体色は黒色から褐色まで変化があり、体重は二百から三百キログラムまでになる。食性や越冬方法などはニホンツキノワグマとほぼ同様の生態行動をとる。(藤吉正明記)
【例句】
冱は来ぬ熊は掌をなめもの謂はず
前田普羅「飛騨紬」