稲の花(いねのはな)初秋
【子季語】
富草の花
【解説】
花穂に綿毛のような花を付ける。開花時間は通常十時~十二時、終わった花が田の面に浮遊するのは風情がある。農耕の民にとって稲の花は米の出来高と直結することであり、祈りを持ってみつめる花である。
【科学的見解】
イネの花は、穂状花序となり、小穂を複数つける。小穂には花弁がなく、開花時には雄花と雌花が突き出し、風により受粉が行われる。小穂には苞頴がなく、護頴と内頴が一般的に籾殻と呼ばれる部位である。(藤吉正明記)
【例句】
稲の花吸はぬを蝶の艶かな
言水「言水句集」
稲の花これを佛の土産かな
智月尼「猿蓑」
先づ入るや山家の秋を早稲の花
惟然「有磯海」
稲の花大の男の隠れけり
一茶「一茶句帖」
此上に年を積むべし稲の花
梅室「梅室家集」
馬買ひてつなぐまがきや稲の花
才麿「花の市」
白河はひくき在所や稲のはな
蝶夢「草根発句集」
湯治二十日山を出づれば稲の花
正岡子規「子規句集」
赤ん坊の乳に吸ひつく稲の花
長谷川櫂「天球」