野菊(のぎく)仲秋
【子季語】
紺菊、野紺菊、竜脳菊、油菊、泡黄金菊
【解説】
山野に咲く菊の総称。色もさまざまで、野路菊は白、油菊は黄、野紺菊は淡い紫、海辺に咲く白い浜菊も美しい。
【科学的見解】
野菊は、日本在来の山野に自生するキク科キク属の約十六種の総称である。代表的な種としては、サツマギク、ノジギク、リュウノウギク、シマカンギク等が知られている。多くは日当たりの良いところを好むため、草原や林縁、海岸付近等の開けたところに自生している。これらの植物は、筒状花と舌状花をあわせもつ頭花を形成し、また葉に特有の香りを含んでいる。(藤吉正明記)
【例句】
撫子の暑さ忘るる野菊かな
芭蕉「旅館日記」
名もしらぬ小草花咲く野菊かな
素堂「曠野」
重箱に花なき時の野菊哉
其角「句兄弟」
朝見えて痩たる岸の野菊哉
支考「其便」
なつかしきしをにがもとの野菊哉
蕪村「蕪村句集」
足元に日のおちかかる野菊かな
一茶「文化句帖」
湯壷から首丈出せば野菊かな
夏目漱石「漱石全集」
百丈の断崖を見ず野菊見る
高浜虚子「六百五十句」
蝶々のおどろき発つや野菊の香
前田普羅「春寒浅間山」
頂上や殊に野菊の吹かれをり
原石鼎「花影」
かがみ折る野菊つゆけし都府楼址
杉田久女「杉田久女句集」