蘗(ひこばえ)仲春
【子季語】
ひこばゆ
【解説】
春、樹木の切り株や根元から萌え出る若芽のこと。名前は「ひこ生え」に由来する。
【科学的見解】
ひこばえは、萌芽とも呼ばれ、主に広葉樹の樹木で見られる現象である。里などでは、昔から炭や薪を得るために、クヌギやコナラなど広葉樹を主体とした雑木林が管理されてきた。樹木の伐採後、種子や苗を植えるよりも、切り株から発生した萌芽を生かすことで、より樹木が早く成長し、効率的な木材生産を行うことができる。この管理のやり方を、萌芽更新または萌芽再生と呼ぶ。(藤吉正明記)
【例句】
蘗に杣が薪棚荒れにけり
芝不器男「芝不器男句集」
あらぬ木の蘗えにけり捨屋敷
松瀬青々「妻木」
大いなる蘗に日の当りけり
原月舟「国民俳句」