菜の花(なのはな) 晩春
【子季語】
花菜、菜種の花、油菜
【関連季語】
菜種蒔く、花菜漬 、菜種梅雨
【解説】
菜種の黄色い花。一面に広がる黄色の菜の花畑は晩春の代表的な景色。近世、菜種油が灯明として用いられるようになってから、関西を中心に栽培されるようになった。花の莟は食用にもなる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
菜の花畠に、入日薄れ、見わたす山の端、霞ふかし。春風そよふく、空を見れば、夕月かかりて、にほひ淡し。 高野辰之『朧月夜』
【科学的見解】
菜の花は、アブラナ科アブラナ属の越年性(冬型一年生)植物の総称で、アブラナ、カラシ、セイヨウアブラナなどが存在し、ヨーロッパから中央アジア原産の外来植物である。日本では、古くから野菜として、また油を採るため栽培されてきた。四月ころ茎の先に黄色い十字形の花を密集させるさせる。現在では、栽培されていたものが逸出し、河川等で野生化している。(藤吉正明記)
【例句】
菜畠に花見顔なる雀哉
芭蕉「泊船集」
菜の花や月は東に日は西に
蕪村「続明烏」
なの花の中に城あり郡山
許六「韻塞」
菜の花やかすみの裾に少しづつ
一茶「七番日記」
菜の花や淀も桂も忘れ水
言水「珠洲之海」
菜の花は濃く土佐人の血は熱く
松本たかし「火明」
菜の花に汐さし上がる小川かな
河東碧梧桐「新俳句」
菜の花の夜明け月に馬上かな
村上鬼城「鬼城句集」
菜の花の中に小川のうねりかな
夏目漱石「漱石全集」
菜の花を包みて莚雪まみれ
長谷川櫂「天球」
菜の花や天に煙の届かざる
高田正子「玩具」