【子季語】
季夏、晩夏光
【解説】
暦の上では夏の終わりだが、暑さまだまだ衰えを見せない。しか し朝夕に吹く風に秋が近いことを感じるのもこのごろ。去り行く 夏への感慨も湧いてくる。
【例句】
晩夏光バツトの函に詩を誌す
中村草田男「火の島」
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水狂言(みずきょうげん/みづきやうげん) 晩夏
【子季語】
水芸
【解説】
水を使って涼しさを演出する歌舞伎の狂言のこと。舞台に大きな水槽を設け、その中で争いごとを演じるなどの工夫がなされた。
桜の実(さくらのみ)仲夏
【子季語】
実桜/桜実となる
【解説】
桜の花が終わったの小さな実。豆粒ほどで食べられず、次第に黒っぽくなる。
【科学的見解】
桜は、バラ科サクラ属植物の総称で、在来の野生種としてはヤマザクラやオオシマザクラ、エドヒガン等が有名である。また、江戸時代に発見された雑種としては、ソメイヨシノ(オオシマザクラとエドヒガンの雑種)が知られている。それらの種には、開花後夏ごろ一センチほどの果実が実り、熟すと黒紫色に変化する。酸味や苦み等の特徴があるので、生食には不向きであるが、砂糖を加えジャム等の加工食として楽しむことができる。(藤吉正明記)
【例句】
実ざくらや死にのこりたる菴の主
蕪村「蕪村句集」
実桜やいにしへ聞けば白拍子
麦水「葛箒」
桜の実わが八十の手を染めし
細見綾子「虹立つ」
雛罌粟(ひなげし)三夏
下がり花(さがりばな)仲夏
【解説】
西南諸島から東南アジア、インドにかけて広く分布するサガリバナ科サガリバナ属の常緑高木。海辺に生えて木の高さは二十メートルくらいになる。楕円形形の葉の長さは三十センチくらいになり、六月から七月頃、夜に黄白色の四弁の花を咲かせる。線状に長い雄蕊が目立つが朝には落花する。
夏の風(なつのかぜ)三夏
【子季語】
夏風 夏嵐
【解説】
立夏以後に吹く風、涼しい風もあれば暑苦しい風もある、梅雨どきの風は重く湿っている。
松明あかし(たいまつあかし)初冬
【子季語】
須賀川の松明あかし
【解説】
毎年十一月の第二土曜日に開催される福島県須賀川市の伝統の火祭り、長さ十メートル、重さ三トンの大きな松明を若者百五十人が、二階堂神社から担ぎ出し、町を練り歩いて五老山へと向う。伊達政宗に滅ぼされた須賀川城の戦士のとむらいが起源とされる。
【例句】
火の柱の火の壁の松明あかし
金子兜太 (句碑)
来てもみよ焦がれてもみよ松明し
長谷川櫂「九月」
初秋(はつあき)初秋
初冬(はつふゆ)初冬
【子季語】
孟冬、上冬、冬の始
【解説】
陰暦十月の名称。陽暦の十一月頃で、冬を初冬、仲冬、晩冬と三区分した時の初めに当る。大気はひんやりとしているが、紅葉が残っていたり、米作りの済んだ田が広がっていたりする。秋の名残を惜しみつつ冬に向かう頃。
【例句】
初冬や訪はんと思ふ人来ます
蕪村「落日庵句集」
初冬や日和になりし京はづれ
蕪村「蕪村句集」
初冬や空へ吹かるる蜘の糸
召波「五車反古」
はつ冬やふたつ子に箸とらせ見る
暁台「暁台句集」
はつ冬の山々同じ高さかな
鳳朗「鳳朗発句集」
初冬や藪潜りして鳴かぬ鳥
天涯「寂砂子集」
初冬や干葉に塞がる小屋の口
篠原温亭「温亭句集」
湯にゆくと初冬の星座ふりかぶる
石橋秀野「桜濃く」
初夏(しょか) 初夏
【子季語】
夏始、首夏、孟夏
【解説】
陽暦なら五月、陰暦なら卯月のころを指す。空はからりと晴れ渡り、暑さもまだそれほど強くはない。まことにすがすがしい気候のころで、大型連休を利用して行楽客が山や海へ繰り出す。
【例句】
暫時は滝に籠るや夏の初
芭蕉「おくのほそ道」
初夏や棕櫚の葉ひらく影づくり
大須賀乙字「乙字句集」
初夏や蝶に眼やれば近き山
原石鼎「花影」
初夏や瞳海にとぶ蝶一つ
原石鼎「ホトトギス雑詠選集」