【解説】
糞を食用とするコガネムシ科の昆虫は糞虫と呼ばれる。その中の一部は糞を転がして運び、幼虫を育てるために糞を蓄える。これが糞ころがしである。体長は3mmくらいなのであまり目につかない。
【例句】
バビロンに生きて糞ころがしは押す
加藤楸邨「鶴と煙突」
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河鵜(かわう、かはう)三夏
【子季語】
海鵜、鵜
【解説】
ペリカン目ウ科の鳥。首が長く全身黒色。繁殖期には頭部に白い羽毛が生ずる。日本では本州と九州で繁殖し、四国では冬に見られる。水辺に棲み、潜水して魚を獲る。なお、長良川の鵜飼に使うのは海鵜。
【科学的見解】
カワウは、ウ科の野鳥で、九州以北で繁殖し、主に留鳥として生息している。本種は魚類を主食にしているため、河口や入り江などの海岸沿いにいる場合が多い。本種は、中型の水鳥で、水かきのある足を巧みに使い潜水を行う。潜水後は、撥水性を高めるために、翼を広げて羽毛を乾かす必要がある。産卵期は長く、冬の十一月から初夏の六月までであり、卵数は三個から四個程である。近縁種としては、ウミウが知られており、本種の背中の羽の色は茶褐色に対して、ウミウは光沢のある緑色となるため、その点で区別できる。(藤吉正明記)
【例句】
首たてて鵜のむれのぼる早瀬かな
浪化「喪の名残」
鵜の嘴に魚とりなほす早瀬かな
白雄「白雄句集」
昼の鵜の現に鳴くか籠のうち
青蘿「青蘿発句集」
あながちに鵜とせりあはぬかもめかな
尚白「猿蓑」
鵜の面に川波かゝる火影哉
闌更「半化坊発句集」
しのゝめや鵜をのがれたる魚浅し
蕪村「蕪村句集」
風吹て篝のくらき鵜川かな
正岡子規「子規句集」
草蜉蝣(くさかげろう、くさかげろふ)晩夏
桐の実(きりのみ) 初秋
燕帰る(つばめかえる、つばめかへる)仲秋
【子季語】
去ぬ燕、巣を去る燕、帰る燕、帰燕、秋燕、残る燕
【解説】
春に渡って来た燕は秋に南方へ帰ってゆく。夏の間に雛をかえし、九月頃群れをなして帰ってゆくと、淋しさが残る。
【例句】
馬かりて燕追ひ行くわかれかな
北枝「卯辰集」
落日のなかを燕の帰るかな
蕪村「夜半叟句集」
乙鳥は妻子揃うて帰るなり
一茶「九番日記」
頂上や淋しき天と秋燕
鈴木花蓑「鈴木花蓑句集」
身をほそめとぶ帰燕あり月の空
川端茅舎「川端茅舎句集」
燕はやかへりて山河音もなし
加藤楸邨「火の記憶」
啄木鳥(きつつき)三秋
螻蛄鳴く(けらなく)三秋
【子季語】
おけら鳴く
【解説】
螻蛄は体長三十ミリぐらいの茶褐色の昆虫。田畑の土中に穴を掘って棲み、雄がジーと低い音で鳴く。秋の夜の淋しさがつのる。昔の人がその声を蚯蚓と誤り、「蚯蚓鳴く」の季語が生まれた。実は螻蛄が鳴いていたのだ。
【例句】
夜のおけら耳朶を聾するばかりなり
原石鼎「花影」
冬の虫(ふゆのむし)三冬
【子季語】
虫老ゆ、虫嗄る、虫絶ゆ
【解説】
秋美しい声で鳴いていたこおろぎなども寒くなると、短く弱々しく縁の下などで鳴いている。絶えゆく前の声はあわれを誘う。
鶫(つぐみ) 晩秋
蛭(ひる)三夏
【子季語】
馬蛭、山蛭、血吸蛭、扁蛭
【解説】
湿地帯に棲息する環形動物で、ヒル綱に属する。体の前後の腹部に吸盤を持ち、人や動物に張りついて血を吸う。
【例句】
人の世や山は山迚蛭が降る
一茶「七番日記」
山深し若葉の空に蛭の降る
几董「晋明集五稿」
蛭ひとつ水縫ふやうに動きけり
花史「西歌仙」
炎帝の下さわやかに蛭泳ぐ
原石鼎「花影」