「桜の菓子の魅力」 第10回きごさい+ 報告

3月18日(土)に、第10回「きごさい+」が神奈川近代文学館で開催されました。
講師は虎屋文庫の専門職、虎屋取締役の中山圭子さん。
テーマは昨年の「梅の菓子の魅力」に続く和菓子シリーズ第二弾「桜の和菓子」です。

菓子の歴史は木の実や果物にはじまり、古来ある餅や団子に外来食物が影響を与えて様々な和菓子が作られるようになりました。遣唐使により唐菓子、鎌倉~室町時代に中国に留学した禅僧により点心(羊羹・饅頭など)、戦国~江戸時代初期には南蛮菓子(金平糖・カステラなど)がもたらされました。江戸時代に砂糖の流通量が増え、商品経済の発展により和菓子は大成します。

和菓子の意匠は、詩歌・名所・謡曲・古典文学と関連が深く、吉祥的意味や季節感が反映されています。元禄6年(1693年)刊『男重宝記』には、自然風物をイメージした様々な意匠が紹介されています。桜は意匠化しやすい姿かたちで集合体としての美しさがあり、花の代表です。桜をかたどった落雁の銘には、花見車・花筏・桜川などがあり、その木型の素材は山桜でした。

現在、木型職人は全国に5名ほどしかいないのではとのことでした。デザインものは機械でも出来ますが、絵画的な曲線などは、心を込めた職人さんの手によるものが味わい深いとのこと。菓子店の廃業などで使われなくなった木型は、地元の資料館などで大事にするのがいいと提言されました。また、大阪日本民芸館で「菓子木型の世界」が7月17日まで開催されるというお知らせがありました。ぜひ行きたいと思います。

今回は、中山さんのお話を楽しんだあと虎屋の桜の和菓子を味わいました。一番人気は桜餅でした。桜餅の生地には小麦粉と道明寺がありますが、歴史が古いのは小麦粉を使ったものだそうです。桜の葉も一緒に食べると風味が増します。さて、私がいただいた和菓子の銘は「手折桜」。濃い紅色の桜が華やかです。白隠元ではなく白小豆が使われていて紅花色素で色付けされています。まさに五感で楽しむ和菓子です。優しい上品な味でした。後ろの席の方が、「もともと美味しい和菓子だけれど中山さんのお話を聞いて食べるとさらに美味しいわ。」と言われたので思わず振り向いて「同感です!」と言いました。

中山圭子さんは学生時代から和菓子の研究をされていて、博識なのはもちろんですが実に楽しそうに語られるのです。「一生遊べるものを見つけた。」と言われたのがとても印象的でした。見つけた一生遊べるものが、和菓子という中山圭子さんと俳句という長谷川櫂さんの対談も楽しくてあっという間に時間が過ぎました。
また来年、季節を変えて中山圭子さんの和菓子のお話が聞けるようなので楽しみです。
(木下洋子記)

<句会報告  選者=中山圭子 長谷川櫂>
◆ 中山圭子 選
特選
花びらのやすらふ木型山桜      大場梅子
移ろへる時のひとひら桜餅      井上じろ

入選
ひといろの紅にはあらず桜菓子    澤田美那子
あはあはと雲のまにまに桜かな    趙栄順
和菓子にも山河ありけり春の風    藤英樹
虹色の地球を入れてしやぼん玉    上村幸三

◆ 長谷川櫂 選
特選
この店の一番人気桜餅        大平佳余子
黒文字も懐紙も桜明かりかな     葛西美津子
遅れきて食べ損ねたり桜餅      伊藤涼子
大口を開けていただく桜餅      山本孝予
はや塵となりにし手折桜かな     葛西美津子
虎屋いま桜の和菓子次々と      西川遊歩
龍天に咥へて去んぬ桜餅       上村幸三
打ち出して花満開や桜川       飛岡光枝
門前に飴引きのばす花の昼      飛岡光枝
乾坤の花を写して菓子ひとつ     澤田美那子
ほろほろとかすみとけゆくごとき菓子 趙栄順
西行にひとつ捧げんさくら餅     鈴木伊豆山
花びらや大阪のひとなつかしく    葛西美津子

入選
四季のある国のほまれや桜餅     小早川東子
葉の香るこれぞ隅田の桜餅      大平佳余子
さくら餅の香りみちたる講座室    樫根勝子
さまざまな銘も楽しや桜菓子     金澤道子
差し入れや井籠ぎつしり桜餅     西川遊歩
ふるさとの桜の葉もて桜餅      山本孝予
安産の腹帯に列桃の花        樫根勝子
移ろへる時のひとひら桜餅      井上じろ
黒文字の香をはじめによもぎもち   福島光加
元禄の春のおごりや桜餅       飛岡光枝
草餅の心平和の心かな        藤英樹
漬けられて花のかをりの桜の葉    趙栄順
中日すぎ楽屋に届く桜餅       木下洋子
井籠の一段目には桜菓子       大平佳余子
昔見し雛は変はらず友の家      中山圭子
うら若き微熱ありけり桜餅      井上じろ
けふの色おもかげにして桜餅     井上じろ

◆ 選者の一句
昔見し雛は変はらず友の家      中山圭子
井籠の虎躍り出よ桜餅        長谷川櫂

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