落し角(おとしづの)晩春
【子季語】
鹿の角落つ、忘れ角
【解説】
春から初夏にかけて、生え変わるために鹿は角を落とす。新しい角は袋角と呼ばれ、柔らかい皮膚で覆われている。鹿の角は生え変わるたびにその枝が多くなる。
【例句】
角落とす鹿の狂ひや恋のごとし
樗良「題林集」
角落す鹿や嵯峨野の草の雨
紫暁「そねのまつ」
角落ちてはづかしげなり山の鹿
一茶「八番日記」
角落ちてあちら向いたる男鹿かな
正岡子規「寒山落木」
角落ちし気の衰へや鹿の顔
石井露月「露月句集」
さを鹿はからんと角を落しけん
長谷川櫂「虚空」