雉(きじ) 三春 ♪
子季語 | 雉子、きぎす、きぎし、雉子の声、焼野の雉子 |
関連季語 | 雉酒、雉笛、雉の巣 |
解説 | 雉の雄は、春、「けーんけーん」と鳴いて雌を呼ぶ鳥である。飛ぶ姿よりも歩いている姿 を見かけることが多い。「春の野にあさる雉(きぎし)の妻恋ひにおのがあたりを人に知れ つつ 大友家持『万葉集』」のように、妻恋の象徴として詠われていた。 |
来歴 | 『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。 |
文学での言及 | 春の野のしげき草葉の妻恋ひに飛び立つ雉のほろろとぞ鳴く 平貞文「夫木和歌抄』 |
実証的見解 | 雉は、キジ目キジ科の鳥で日本の国鳥である。北海道と対馬を除く日本各地に留鳥として 棲息している。大きさは雄八十センチ前後で雌は六十センチくらい。雄は全体的に緑色を おびており、目の周りに赤い肉腫がある。雌は全体的に茶褐色。雌雄ともニワトリ似て尾 は長い。繁殖期の雄は赤い肉腫が肥大し、なわばり争いのため攻撃的になり、ケンケンと 鳴いて翼を体に打ちつける「雉のほろろ」と呼ばれる行為をする。 |
参考文献 |
父母のしきりに恋ひし雉子の声 | 芭蕉 「笈の小文」 | ||
ひばりなく中の拍子や雉子の声 | 芭蕉 「猿蓑」 | ||
蛇くふときけばおそろし雉の声 | 芭蕉 「花摘」 | ||
うつくしき顔かく雉の距(けづめ)かな-- | 其角 「其袋」 | ||
滝壺もひしげと雉のほろろかな | 去来 「続猿蓑」 | ||
柴刈に砦を出るや雉の聲 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
亀山へ通ふ大工やきじの聲 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
兀山(はげやま)や何にかくれてきじのこゑ | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
むくと起て雉追ふ犬や宝でら | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
木瓜の陰に皃類ひ住ムきゞす哉 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
きじ啼や草の武藏の八平氏 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
きじ鳴や坂を下リのたびやどり | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
遅キ日や雉子の下りゐる橋の上 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
雉啼くや暮を限りの舟渡し | 几菫 「晋明集二稿」 | ||
雉子の尾の飛さにみたる野風かな | 白雄 「白雄句集」 | ||