繭(まゆ) 初夏
子季語 | 新繭、白繭、黄繭、玉繭、繭干す、繭煮る |
関連季語 | 夏蚕、秋繭、天繭(やままゆ)、糸取、蚕の上蔟、蚕飼 |
解説 | 蚕の作る繭のことで、とくに、春蚕の作った繭を指す。色は白や薄茶、形はくびれた 俵形や楕円形、球形などで生糸の原料になる。俳句では夏に分類。夏蚕や秋蚕の繭に は、別途、秋繭という季語がある。 |
来歴 | 『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。 |
文学での言及 | 垂乳根の母が養(か)ふ蚕の繭ごもりいぶせくもあるか妹に相はずして 作者不詳『万葉集』 |
実証的見解 | 蚕は孵化したときは蟻蚕とよばれ蟻のように小さいが、大量の桑を食べて成長し、四週間 ほどの間に体重が一万倍ほどになる。十分発育して桑を食べなくなると蚕の体は透きって くる。これが繭を作り始める兆候であり、この蚕を、一つ一つ拾い分けて蚕簿(まぶし) に移し替える。これが蚕の上蔟(あがり)と呼ばれる。蚕は蚕簿のなかで絹糸をはいて繭 玉を作り、蚕自身は繭玉の中で蛹になる。上蔟から一週間ほどで蚕簿から繭をもぎとる。 これが繭搔きである。もぎ取った繭は生繭といわれ、これを日に干してなかの蛹を殺す。 これが繭干しである。この繭を煮て絹糸をほぐれやすくしてから糸を取る。 |
参考文献 |
道ばたに繭干すかぜのあつさ哉 | 許六 「句兄弟」 | ||
繭烹や身をかざるべきことでなし-- | 蘭更 「半化坊発句集」 | ||
まゆひとつ仏のひざに作るなり | 一茶 「七番日記」 | ||