砧(きぬた)三秋
子季語 | 砧打つ、衣打つ、藁砧、二丁砧、砧盤、砧槌、昼砧、夕砧、小夜砧、宵砧、遠砧、砧拍子 紙砧、葛砧 |
関連季語 | |
解説 | 木槌で布を和らげるために棒や杵などで打つ台をいう。麻・葛などの繊維はかたいので、 打って和らげる。女性の夜なべ仕事とされた。秋の夜長、遠くに聞こえるその音はものの あわれを誘う。 |
来歴 | 『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。 |
文学での言及 | からごろも打つこゑきけば月きよみまだねぬ人を空にしるかな 紀貫之『新勅撰集』 から衣長き夜すがら打つ声にわれさヘ寝でも明かしつるかな 中納言資綱『後拾遺集』 さ夜ふけて衣しでうつ声きけば急がぬ人も寝られざりけり 伊勢大輔『後拾遺集』 うたた寝に夜やふけぬらんから衣壔つ声高くなりまさるなり 藤原兼房『後拾遺集』 み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさとさむく衣打つなり 藤原雅経『新古今集』 |
実証的見解 | |
参考文献 |
声澄みて北斗にひびく砧かな | 芭蕉 「都曲」 | ||
碪打ちて我に聞かせよや坊が妻 | 芭蕉 「野ざらし紀行」 | ||
針立や肩に槌うつから衣 | 芭蕉 「江戸新道」 | ||
猿引は猿の小袖をきぬた哉 | 芭蕉 「猿舞師」 | ||
砧にもうたれぬ袖の哀れなり | 路通 「松のなみ」 | ||
このふた日きぬた聞えぬ隣かな | 蕪村 「夜半叟句集」 | ||
夢ゆるくうつつせはしき砧かな | 大魯 「月の夜」 | ||
小松吹く伊賀はきぬたの夕べかな | 士朗 「枇杷園句集」 | ||
聞かばやと思ふ砧を打ち出しぬ | 夏目漱石 「漱石全集」 | ||
炎たつ思ひのままに打つ砧 | 長谷川櫂 「初雁」 |