鹿(しか) 三秋
子季語 | すずか、すがる、しし、かのしし、紅葉鳥、小鹿、牡鹿、小牡鹿、鹿鳴く、鹿の声 |
関連季語 | 春の鹿、鹿の子、鹿の袋角、鹿の角切、鹿垣 |
解説 | 鹿は秋、妻を求めて鳴く声が哀愁を帯びているので、秋の季語になった。公園などでも飼 われるが、野生の鹿は、畑を荒らすので、わなを仕掛けたり、鹿垣を設えたりして、人里 に近づけないようにする。 |
来歴 | 『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。 |
文学での言及 | タされば小倉の山に鳴く鹿の今宵は鳴かず寝ねにけらしも 舒明天皇『万葉集』 さを鹿の来立ち鳴く野の秋萩は露霜負ひて散りにしものを 文馬養『万葉集』 山里は秋こそことにわびしけれ鹿の鳴く音に目をさましつつ 忠岑『古今集』 奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき よみ人しらず『古今集』 |
実証的見解 | 鹿は偶蹄目シカ科に属する哺乳類の総称である。世界中に約三十六種が生息すると考えら れている。シカ科に属する動物は草食性で牛同様反芻による消化を行う。雄は枝分かれし た角を持ち、交尾期には、その角を打ち合って雌を奪い合う。鹿の角は皮膚が盛り上がっ てできるもので毎年生えかわる。ちなみに日本に多く生息するカモシカはシカ科ではなく ウシ科に属する。 鹿の角は雄にしか生えない。生まれて一年半未満の雄には角はなく、二歳で角がはえてく る。三歳になると角は二つに枝分かれし、四歳では三つ、五歳以上で四つに枝分かれする。 角は冬に抜け落ち、夏に生え変わるが、最初は血管の通った袋角と呼ばれる柔らかいもの で、秋には硬いものになる。 |
参考文献 |
ぴいと啼く尻声悲し夜の鹿 | 芭蕉 「笈日記 | ||
女をと鹿や毛に毛がそろうて毛むつかし-- | 芭蕉 「貝おほひ」 | ||
武蔵野や一寸ほどな鹿の声 | 芭蕉 「俳諧当世男」 | ||
ひれふりてめじかもよるや男鹿島 | 芭蕉 「五十四郡」 | ||
鹿のふむ跡や硯の躬恒形 | 素龍 「炭俵」 | ||
笛の音に波もより来る須磨の鹿 | 蕪村 「落日庵」 | ||
一の湯は錠の下りけり鹿の鳴 | 一茶 「文化句帳」 | ||
親鹿の岩とびこえて鳴きにけり | 正岡子規 「子規全集」 | ||