【子季語】
耕畝忌
【解説】
俳人・種田山頭火の忌日。明治十五年、山口県生まれ。俳句は荻 原井泉水に師事。種田家破産後、妻子を捨て出家し、墨染の衣に 行乞生活を送りながら、漂泊の思いを吐露した自由韻律の句を詠 んだ。昭和十五年、五十七歳で没。
検索結果: "泉"
金縷梅(まんさく)初春
玉葱(たまねぎ)三夏
枯芒(かれすすき)三冬
【子季語】
枯尾花、芒枯る、枯薄、尾花枯る、冬芒
【解説】
枯れ尽くした芒。葉も穂も枯れ果て、茎の部分が風に揺れる姿は寂寥感の極み。枯れ尽くした芒も野原一面に群れると美しくもある。雪や風の中に見るのも風情がひとしお。芒は秋の季語。
【例句】
ともかくもならでや雪の枯尾花
芭蕉「北の山」
枯きつて風のはげしき薄かな
杉風「木曾の谷」
枯尾花野守が鬢にさはりけり
蕪村「蕪村遺稿」
水際の日に日に遠しかれを花
暁台「暁台句集」
土になれ土になれとやかれ尾花
一茶「七番日記」
空也寺や町から見ゆる枯尾花
梅室「梅室家集」
落柿舎のひとむら芒枯れにけり
村上鬼城「定本鬼城句集」
路傍の石に夕日や枯すすき
泉鏡花「鏡花全集」
枯尾花日光富士を消しにけり
渡辺水巴「水巴句集」
日にとくる霜の白さや枯芒
原石鼎「花影」
山茶花(さざんか、さざんくわ)初冬
【子季語】
姫椿
【解説】
日本固有のツバキ科の常緑小高木で、枝先に白か淡紅色の五弁の花を開く。園芸種として八重咲きや濃紅・絞りなどもある。
【科学的見解】
山茶花(サザンカ)は、ツバキ科ツバキ属の在来植物であり、山口・高知・長崎・熊本・鹿児島・沖縄などの地域で生育している。ヤブツバキと同様に、多くの園芸品種が作出され、公園や庭木として植栽されている。近縁種としてヒメサザンカが存在するが、ヒメサザンカは沖縄にしか自生していない。(藤吉正明記)
【例句】
山茶花を旅人に見する伏見かな
西鶴「蓮の実」
山茶花や雀顔出す花の中
青蘿「青蘿発句集」
さざん花に囮鳴く日のゆふべかな
言水「京日記」
山茶花に雨待つこころ小柴垣
泉鏡花「鏡花全集」
山茶花のこゝを書斎と定めたり
正岡子規「子規句集」
山茶花を雀のこぼす日和かな
正岡子規「子規句集」
山茶花のみだれやうすき天の川
渡辺水巴「白日」
山茶花やいくさに敗れたる国の
日野草城「旦暮」
山茶花のととのふときのなかりけり
長谷川櫂「虚空」
早梅(そうばい、さうばい)晩冬
【子季語】
早咲の梅、梅早し
【解説】
風土により早めに咲いた梅の花のこと。早咲きの梅をたずね歩くことを探梅という。
【例句】
早梅や御室の里の売屋敷
蕪村「蕪村句集」
梅つばき早咲ほめむ保美の里
芭蕉「真蹟詠草」
早梅や懸燈台の薄明かり
史邦「北の山」
早梅の岨に温泉を引く筧かな
巌谷小波「さゞら波」
早梅やひとりたのしき鳰
石田波郷「風切以後」
露草(つゆくさ)三秋
【子季語】
月草、かま草、うつし花、蛍草、青花、帽子花、百夜草、鴨跖草
【解説】
道ばたや庭先にふつうにみかける秋の草。貝の形の小さいがあざやかな青い花は、古くから染料にも使われてきた。月草、蛍草ともいう。
【科学的見解】
露草(ツユクサ)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年草である。日本在来の植物であり、全国の野山や都市で普通に見られる。在来の植物の中では、数少ない青い花を咲かせる植物である。ツユクサの変種としてオオボウシバナが存在し、ツユクサよりも大きい花弁をつける。(藤吉正明記)
【例句】
露草のさかりをきえて夜の雲
闌更「三傑集」
月草の色見えそめて雨寒し
暁台「暁台句集」
朝風や蛍草咲く蘆の中
泉鏡花「鏡花全集」
露草も露のちからの花ひらく
飯田龍太「百戸の谿」
鎌の刃は露草の花つけてをり
長谷川櫂「天球」
木犀(もくせい)晩秋
【子季語】
木犀の花、金木犀、銀木犀、薄黄木犀、桂の花
【解説】
金木犀は橙黄色の花。銀木犀は白色の花。九月、中秋のころに花をつける。花は小さいが香りは高く、庭木に広く用いられる。芳香は金木犀の方が強い。爽やかな風に漂う香りは、秋の深まりを知らせてくれる。
【科学的見解】
金木犀(キンモクセイ)は、モクセイ科モクセイ属の常緑樹木である。中国原産で、外来種として公園や庭に植栽されている。日本には、基本的に雄株しか導入されていないため、結実はめったに見られない。同種の一変種として白花のギンモクセイが存在し、稀に植栽されている。その他、在来の木犀の仲間としては、ヒイラギ、リュウキュウモクセイ、シマモクセイ、オオモクセイ等が存在する。ヒイラギは、関東以西から沖縄にかけて分布し、葉に刺(歯牙)があるが香りが良いために、庭木としても利用されている。(藤吉正明記)
【例句】
木犀の昼は醒めたる香炉かな
嵐雪「夢の名残」
木犀にかしらいたむやたたみさし
大江丸「はいかい袋」
木犀の香に染む雨の鴉かな
泉鏡花「鏡花全集」
木犀に土は色濃うして膨らめる
原月舟「月舟全集」
木犀や屋根にひろげしよき衾
石橋秀野「桜濃く」
天つつぬけに木犀と豚にほふ
飯田龍太「百戸の谿」
初嵐(はつあらし) 初秋
【解説】
立秋を過ぎて、初めて吹く嵐のこと。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
秋風よ荻の上葉になれなれて嵐にうつる今日ぞかなしき 慈鎮和尚『夫木和歌抄』
【例句】
初あらしいやおどろくは与謝の景
重頼「桜川」
駕籠に居て挑灯持つや初あらし
太祇「石の月」
温泉湧く谷の底より初嵐
夏目漱石「漱石全集」
冷まじ(すさまじ) 晩秋
【子季語】
すさまじ
【解説】
季語の「すさまじ」は漢字をあてると「冷まじ」であり、晩秋の急に身に迫る冷やかさをいう。「すさまじい勢い」などというときの「すさまじ」(凄まじ)は冷やかにかぎらず、程度が激しいこと、さらには、荒れているという言葉だが、「荒(すさ)ぶ」「すさむ」から出た言葉で、もとより同根。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
昼吠ゆる犬、春の網代、三四月の紅梅の衣、牛死にたる牛飼、乳児亡くなりたる産屋、火おこさぬ炭櫃、地火炉。博士のうち続き女児生ませたる。方違へに行きたるに、あるじせぬ所。まいて節分などは、いとすさまじ 『枕草子』「すさまじきもの」の段
年暮れてわがよ更けゆく風の音に心の内のすさまじきかな 紫式部『玉葉集』
冬枯のすさまじげなる山里に月のすむこそあはれなりけり 西行『玉葉集』
跡たえてうづまぬ霜ぞすさまじき芝生が上の野べの薄雪 冷泉院『風雅集』
【例句】
猪は季をこそ持たね冷じき
来山「海陸後集」
冷まじや吹出づる風も一ノ谷
才麿「椎の葉」
山畑に月すさまじくなりにけり
原石鼎「花影」
すさまじきものを咥へて猫帰る
長谷川櫂「初雁」