【子季語】
大根焚
【解説】
十二月九日・十日京都鳴滝了徳寺の行事。建長四年親鸞上人を大根煮でもてなしたという故事にちなむ。朝から人々の行列が出来、大鍋から飴色に炊けた青首大根と揚豆腐が手際よく椀によそわれ、参詣者に施される。中風のまじないともされる。
検索結果: "大根"
大根引く(だいこんひく)初冬
【子季語】
だいこひき、大根馬、大根舟、大根車
【解説】
大根を収穫すること。晩秋から初冬にかけて葉を両手で持って、畑から抜き取る。雪の中の作業になることもある。
【例句】
鞍壺に小坊主乗るや大根引
芭蕉「炭俵」
出女に投げて通るや大根引
許六「宇陀法師」
伊吹には雪こそ見ゆれ大根引
支考「草苅笛」
大根引馬おとなしく立眠り
鬼城「定本鬼城句集」
たらたらと日が真赤ぞよ大根引
川端茅舎「川端茅舎句集」
白砂のやうな陽を浴び大根引
高田正子「玩具」
春大根(はるだいこん)仲春
【子季語】
二年子大根、春福大根、春若大根、苗代大根、秦野大根
【解説】
普通、大根は初秋に種子を蒔いて、冬収穫するが、晩秋に種子を 蒔き、翌年の四~六月に収穫するものもある。これを春大根とい う。
大根蒔く(だいこんまく)仲秋
【解説】
秋蒔きは八月中旬から九月上旬にかけて二百十日迄に行う。この大根 は冬の食卓にのぼる。春蒔きのものもある。
【例句】
大根蒔くうしろの山に入る日かな
赤木格堂「春夏秋冬」
夏大根(なつだいこん)三夏
大根(だいこん)三冬
【子季語】
だいこ、おおね、大根畑、沢庵大根、青首大根、三浦大根、聖護院大根
【解説】
古名は、おおむね。日本の野菜の中で最も用途の広いものである。煮大根、すり大根、沢庵大根、干大根などにしてよく食す。種類も多いが青首大根、三浦大根、練馬大根などが代表格である。
【科学的見解】
大根(ダイコン)は、アブラナ科ダイコン属の一年草・越年草(冬型一年草)であり、地中海東部原産とされている。古代より栽培されてきた野菜であり、多くの品種が存在する。日本の野生種に海辺付近の砂礫地に生育するハマダイコンがあるが、これは栽培種が野生化したものとされている。春の七草の一つで、蘿蔔(すずしろ)とも呼ばれている。(藤吉正明記)
【例句】
菊の後大根の外更になし
芭蕉「陸奥鵆」
ものゝふの大根苦きはなし哉
芭蕉「真蹟」
大根に実の入る旅の寒さかな
園女「小弓俳諧集」
武者ぶりの髭つくりせよ土大根
蕪村「自画賛」
大根で団十郎する子供かな
一茶「七番日記」
流れ行く大根の葉の早さかな
高浜虚子「五百句」
大根を水くしやくしやにして洗ふ
高浜虚子「六百句」
畑大根皆肩出して月浴びぬ
川端茅舎「川端茅舎句集」
すこやかな泥大根のごとき句を
長谷川櫂「新年」
大根の花(だいこんのはな) 晩春
【子季語】
菜大根の花、種大根
【関連季語】
諸葛菜、大根
【解説】
大根の種を採るために畑に残した株に薹が立ち、白い十字型の花を咲かせる。紫がかったものもある。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【科学的見解】
大根(ダイコン)は、アブラナ科の一年草または二年草で、地中海・中東地方が原産である。古名はオオネ、スズシロで、日本には弥生時代に伝わり、古くから栽培されていた。四月から五月にかけて、白または淡紫色の花を茎頂に密集して咲かせる。地下に垂直に伸びた根が肥大し食用になる。ダイコンの変種としてハマダイコンが知られているが、それは栽培されていたダイコンが野生化したものとされている。ハマダイコンは、海岸の砂地などに生育している。(藤吉正明記)
【例句】
ふみたふす形に花咲く土大根
乃龍「続猿蓑」
まかり出て花の三月大根かな
一茶「題叢」
雀啼く大根の花やひな曇
正岡子規「子規句集」
花大根遊女の塚を並べけり
松瀬青々「妻木」
花大根黒猫鈴をもてあそぶ
川端茅舍「川端茅舍句集」
三月大根(さんがつだいこん/さんぐわつだいこん) 仲春
【解説】
春大根のうち特に陰暦三月頃に収穫するものをいう。
【例句】
まかり出て花の三月大根かな
一茶「希杖本句集」
野大根(のだいこん)晩春
【子季語】
細根大根/弘法大根/浜大根/野良大根
【解説】
栽培種の種子が飛んで野山に生える大根のこと。海辺に自生する ものは浜大根という。
【科学的見解】
ダイコンは、アブラナ科の野菜であるが、古い時代に日本に導入された後、現在では様々な品種が作出され、日本各地で栽培がおこなわれている。その栽培品種の種子が野に逸出して生育しているのがたまに見られる。ダイコンの花は、白花の四枚の花弁を持ち、その先端付近が桃色になることもある。各地の河川には、畑で栽培されていた野菜類の苗や種子が雨で流されてくる場合が多いが、畑から逸出したダイコンも河川敷などで春先開花している。それとは別に、古い時代に野生化したダイコンが海辺砂浜などに生育しているものが存在するが、それらはハマダイコンと呼ばれ、ダイコンとは別に取り扱われている。(藤吉正明記)
【例句】
野大根も花咲きにけり鳴く雲雀
一茶「文化句帖」
四月大根(しがつだいこん/しぐわつだいこん) 仲春
【解説】
春大根の中でも、四月頃に収穫するものをいう。