牡丹(ぼたん) 初夏
子季語 | ぼうたん、深見草、富貴草、白牡丹、牡丹園 |
関連季語 | 寒牡丹、牡丹の芽、牡丹焚火 |
解説 | 花の王といわれる中国渡来の花。初夏、白や紅、黒紫など芳香のある大輪の花を咲かせる。 花の姿は華麗で、寺社の庭園などで観賞用に栽培されてきた。漢詩人、なかでも白楽天が 好んで詠んだ。俳句でも牡丹の名句が多く詠まれているが、画家でもあった蕪村にとりわ け多い。奈良の長谷寺、当麻寺が牡丹の寺として有名である。 |
来歴 | 『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。 |
文学での言及 | 形見とて見れば嘆きのふかみ草なになかなかのにほひなるらん 藤原重家『新古今集』 |
実証的見解 | ボタン科ボタン属の落葉小低木。原産は中国北西部と考えられている。日本には天平時代 に渡ったといわれる。日本に伝わる前から園芸品種が作られ、江戸期には百六十以上もの 品種があったとされる。木の丈は一メートルから一メートル半くらい。葉は二回三出羽状 複葉で互生する。葉の長さは四センチから十センチくらいで裏は白っぽい。五月ころ、今 年のびた枝に二十センチにもなる大輪の花を咲かせる。花の色は、白、赤、ピンク、黄な どさまざま。多数の花弁が重なり合うようにぼってりと咲く。 |
参考文献 |
牡丹蘂ふかく分出る蜂の名残哉 | 芭蕉 「野ざらし紀行」 | ||
いにしへのならの都の牡丹持 | 其角 「其角発句集」 | ||
牡丹散つてうちかさなりぬ二三片 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
牡丹切て気の衰へし夕かな | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
閻王の口や牡丹を吐かんとす | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
地車のとゞろとひゞく牡丹かな | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
低く居て富貴をたもつ牡丹かな | 太祇 「太祇句選」 | ||
扇にて尺を取りたる牡丹哉 | 一茶 「八番日記」 | ||
美服して牡丹に媚びる心あり | 正岡子規 「子規全集」 | ||
牡丹の花に暈ある如くなり | 松本たかし 「松本たかし句集」 | ||
花に葉に花粉ただよふ牡丹かな | 松本たかし 「ホトトギス雑詠選集」 | ||
花深く煤の沈める牡丹かな | 松本たかし 「ホトトギス雑詠選集」 | ||
日輪を送りて月の牡丹かな | 渡辺水巴 「ホトトギス雑詠選集」 | ||
僧兵の庭に屯の牡丹かな | 渡辺水巴 「ホトトギス雑詠選集」 | ||
したたかに墨を含める牡丹かな | 長谷川櫂 「初雁」 | ||
大濤のくづれし嵩の牡丹かな | 高田正子 「花実」 |