子季語 | 明月、満月、望月、望の月、今日の月、月今宵、今宵の月、三五の月、三五夜、十五夜 芋名月、中秋節 |
関連季語 | 月、待宵、十六夜、立待月、居待月、臥待月、更待月、良夜 |
解説 | 旧暦八月十五日の月のこと。「名月をとつてくれろと泣く子かな」と一茶の句にもあるよ うに、手を伸ばせば届きそうな大きな月である。団子、栗、芋などを三方に盛り、薄の穂 を活けてこの月を祭る。 |
来歴 | 『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。 |
文学での言及 | 水の面に照る月なみを数ふれば今宵ぞ秋のも中なりける 源順『拾遺集』 |
実証的見解 | 中秋の名月は旧暦が日本に伝わる前からあった年中行事である。太古、日本は里芋を重要 な食料としてをり、中秋の名月はその里芋の収穫祭であった。中秋の名月を芋名月ともい うのはその名残である。また、中秋の名月は必ずしも満月とはかぎらない。確率的には満 月でないほうが多い。これは旧暦と月齢がぴったり一致しないためであり、新月から満月 までの時間にぶれが生じるためである。ちなみに今年(二〇〇九年)の中秋の名月は新暦 の十月三日であるが、満月になるのはそれより一日遅い十月四日である。 |
参考文献 |
名月や池をめぐりて夜もすがら | 芭蕉 「孤松」 | ||
名月や北国日和定めなき | 芭蕉 「奥の細道」 | ||
命こそ芋種よ又今日の月 | 芭蕉 「千宜理記」 | ||
たんだすめ住めば都ぞけふの月 | 芭蕉 「続山の井」 | ||
木をきりて本口みるやけふの月 | 芭蕉 「江戸通り町」 | ||
蒼海の浪酒臭しけふの月 | 芭蕉 「坂東太郎」 | ||
盃にみつの名をのむこよひ哉 | 芭蕉 「真蹟集覧」 | ||
名月の見所問ん旅寝せん | 芭蕉 「荊口句帳」 | ||
三井寺の門たゝかばやけふの月 | 芭蕉 「酉の雲」 | ||
名月はふたつ過ても瀬田の月 | 芭蕉 「酉の雲」 | ||
名月や海にむかかへば七小町 | 芭蕉 「初蝉」 | ||
明月や座にうつくしき顔もなし | 芭蕉 「初蝉」 | ||
名月や兒(ちご)立ち並ぶ堂の縁 | 芭蕉 「初蝉」 | ||
名月に麓の霧や田のくもり | 芭蕉 「続猿蓑」 | ||
明月の出るや五十一ヶ条 | 芭蕉 「庭竈集」 | ||
名月の花かと見えて棉畠 | 芭蕉 「続猿蓑」 | ||
名月や門に指しくる潮頭 | 芭蕉 「三日月日記」 | ||
名月の夜やおもおもと茶臼山 | 芭蕉 「射水川」 | ||
名月や海もおもはず山も見ず | 去来 「あら野」 | ||
名月や畳の上に松の影 | 其角 「雑談集」 | ||
むら雲や今宵の月を乗せていく | 凡兆 「荒小田」 | ||
名月や柳の枝を空へふく | 嵐雪 「俳諧古選」 | ||
名月やうさぎのわたる諏訪の海 | 蕪村 「蕪村句集」 | ||
山里は汁の中迄名月ぞ | 一茶 「七番日記」 | ||
名月をとつてくれろと泣く子かな | 一茶 「成美評句稿」 | ||
名月や故郷遠き影法師 | 夏目漱石 「漱石全集」 | ||
望の月呑みたる真鯉包丁す | 長谷川櫂 「初雁」 |