十六夜(いざよい、いざよひ) 仲秋
子季語 | 十六夜の月、十六夜月、いざよふ月、既望 |
関連季語 | 月、待宵、名月、十六夜、立待月、居待月、臥待月、更待月 |
解説 | 旧暦八月十六日の夜の月、またはその夜をいうので、この名がある。月は満月をすぎると 少しずつ欠けはじめ、月の出も少しずつ遅くなる。十六夜は、その最初の月。動詞「いさ よふ」はぐずぐずする、ためらふの意。 |
来歴 | 『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。 |
文学での言及 | もののふの八十氏河の網代に木にいさよふ波の行方知らずも 柿本人麻呂『万葉集』 こもりくの泊瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらか 柿本人麻呂『万葉集』 出の端にいさよふ月を何時とかも吾が待ちをらむ夜はふけにつつ 作者不詳『万葉集』 君や来むわれや行かむのいさよひに真木の板戸もささず寝にけり よみ人しらず『古今集』 |
実証的見解 | 月の中心が地平線と接する瞬間が月の出であるが、一年を平均すると、月の出は一日に約 五十分ほどおそくなる。ちなみに今年(二〇〇九年)の東京地方の十六夜の月の出は、十 七時三十九分で、前日の中秋の名月より二十六分遅い。翌日の立待月は、十六夜よりさら に二十五分、居待月はさらに二十六分、臥待月は二十七分、更待月は三十一分と徐々に遅 れの時間が大きくなり、中秋の名月から十三日後には、零時を越えてから月が出る。 |
参考文献 |
いさよひもまだ更科の郡かな | 芭蕉 「いつを昔」 | ||
やすやすと出でていざよふ月の雲 | 芭蕉 「笈日記」 | ||
十六夜はわづかに闇の初かな | 芭蕉 「続猿蓑」 | ||
十六夜や海老煎るほどの宵の闇 | 芭蕉 「笈日記」 | ||
十六夜や囁く人のうしろより | 千代女 「千代尼句集」 | ||
一雨の間にいざようて仕舞ひけり | 丈草 「俳諧七部集」 | ||
名月に一夜遅れてけふの月 | 長谷川櫂 「松島」 | ||