俳句 季語 出典
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり 除夜 雪櫟
早乙女の股間もみどり透きとほる 早乙女 花眼
綿雪やしづかに時間舞ひはじむ 綿雪 花眼
磧にて白桃むけば水過ぎゆく 花眼
けふできて光り一日苗代田 苗代 花眼
明るくてまだ冷たくて流し雛 流し雛 花眼
盆唄の夜風の中の男ごゑ 踊唄 花眼
雪嶺のひとたび暮れて顕はるる 雪嶺 花眼
餅焼くやちちははの闇そこにあり 花眼
蜀葵人の世を過ぎしごとく過ぐ 蜀葵 花眼
雪国に子を産んでこの深まなざし 花眼
年過ぎてしばらく水尾のごときもの 行く年 花眼
初夢に見し踊子をつつしめり 初夢 浮鷗
さくら咲きあふれて海へ雄物川 浮鷗
鶏頭をたえずひかりの通り過ぐ 鶏頭 浮鷗
三月や生毛生えたる甲斐の山 三月 浮鷗
まんさくや鯉重なりて山泉 まんさく 浮鷗
かたかごの花や越後にひとり客 片栗の花 浮鷗
送り火の法も消えたり妙も消ゆ 大文字 浮鷗
寒鯉を雲のごとくに食はず飼ふ 寒鯉 浮鷗
夢はじめ現(うつつ)はじめの鷹一つ 初夢 浮鷗
水のんで湖国の寒さひろがりぬ 寒さ 浮鷗
田を植ゑて空も近江の水ぐもり 田植 浮鷗
秋の淡海かすみ誰にもたよりせず 秋の湖 浮鷗
雁の数渡りて空に水尾もなし 雁渡る 浮鷗
白をもて一つ年とる浮鷗 年取 浮鷗
はるかより鷗の女(め)ごゑ西行忌 西行忌 鯉素
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 牡丹 鯉素
淡海いまも信心の国かいつむり かいつぶり 鯉素
白梅の中紅梅に近づきぬ 鯉素
すぐ覚めし昼寝の夢に鯉の髭 昼寝 鯉素
西国の畦曼珠沙華曼珠沙華 曼珠沙華 鯉素
山の蟇二つ露の眼良夜かな 良夜 鯉素
春の野を持上(もた)げて伯耆大山を 春の野 鯉素
若狭には仏多くて蒸鰈 蒸鰈 鯉素
飛騨の夜を大きくしたる牛蛙 牛蛙 鯉素
おうおうと金春家いま薔薇のとき 薔薇 鯉素
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島 炎天 鯉素
蟬山に墓舁ぎ入るえいほうと 鯉素
みづうみに鰲(がう)を釣るゆめ秋昼寝 鯉素
ふり出して雪ふりしきる山つばき 椿 鯉素
しづかにも田植ゑて山河あらたまる 田植 鯉素
大鯉を料りて盆のならず者 鯉素
鮎食うて月もさすがの奥三河 鯉素
大年の法然院に笹子ゐる 大晦日 鯉素
よきこゑにささやきゐたる古女かな 古女 游方
すいときて眉のなかりし雪女郎 雪女郎 游方
朴ひらき大和に花を一つ足す 朴の花 游方
片隅に旅はひとりのかき氷 かき氷 游方
さるすべり美しかりし与謝郡 百日紅 游方
入りてゆく眠りの壺に年の雨 大晦日 游方
最澄の山餅啣へたる犬に逢ふ 游方
口つぐみ飛ぶものをみよ鳥雲に 鳥雲に 游方
春眠の大き国よりかへりきし 春眠 游方
観音の腰のあたりに春蚊出づ 春の蚊 空艪
紀の国に闇大きかり鉦叩 鉦叩 空艪
山吹の黄金(くがね)とみどり空海忌 空海忌 空艪
秋風の吹きあたりゐる伊吹山 秋風 四遠
屠蘇くめや短くなりしいのちの緒 屠蘇 四遠
億年のなかの今生実南天 南天の実 四遠
朧にて寝ることさへやなつかしき 四遠
仰ぎゐて我になりゆく夏の鷹 四遠
送り火や帰りたがらぬ父母帰す 送り火 四遠
顔長きことが長者よとろろ汁 とろろ汁 四遠
寝てよりの落葉月夜を知つてをり 落葉 四遠
妻がゐて夜長を言へりさう思ふ 夜長 所生
命惜しまむ冷麦のうまかりし 冷麦 所生
木の実のごとき臍もちき死なしめき 木の実 所生
人の世は命つぶてや山桜 山桜 餘日
なれゆゑにこの世よかりし盆の花 盆花 餘日
山に降る沫雪を見て雛の唇(くち) 餘日
ひとり来てひとり動けり三十三才 三十三才 餘日
生れし日はわれも小さし仏生会 仏生会 餘日
細ごゑの更けていよいよ風の盆 風の盆 餘日
夜寒さの松江は橋の美しき 夜寒 餘日
日月が知る一本の山桜 山桜 白小
やすらかやどの花となく草の花 草の花 白小
妻亡くて道に出てをり春の暮 春の暮 白小
花万朶をみなごもこゑひそめをり 白小
奥三河芋の葉にのる月夜かな 白小
またたきて星大粒や鬼やらひ 鬼やらひ 白小
国東(くにさき)の仏の国の蕨かな 白小
いとほしや人にあらねど小紫 紫式部 白小
丈に出てそこらさびしきをみなへし をみなへし 花間
つまみゐて朧濃くなる田螺和 田螺和 花間
こころにもゆふべのありぬ藤の花 藤の花 天日
生涯にいくたびか全天鰯雲 鰯雲 天日
かをりたち今年嫁あり初鏡 初鏡 天日
赤子泣く春あかつきを呼ぶごとく 春暁 天日
太箸や眉にも白を加へたる 太箸 天日
仰ぎゐるわれも暮れゐる釣忍 釣忍 天日
この夕べ力つくせり法師蟬 つくつく法師 虚心
孫に吹くわが息足らず草の笛 草笛 深泉