【第20回恋の俳句大賞】
【大賞】
あの人の手紙よく燃ゆ寒昴     澤谷美咲

☆村松二本 選
【特選】 
隠しとほせしかコートの襟をたて  小栗正子
失恋は僕の血となり肉となり    北村友一
あの人の手紙よく燃ゆ寒昴     澤谷美咲
【入選】 
冬薔薇枯れても薔薇でいたかった  井上秀子
初恋の大願成就初詣        髙橋基
きみの首筋ゆふぐれと檸檬の香   秋さやか
嘘を付く君の唇冬薔薇       円美々
友達に戻る時間の銅鑼が鳴る    松田早苗
きっかけを探るりんごの咀嚼音   足立有希
かささぎの橋のたもとで逢ひませう 鹿沼湖

☆趙栄順 選
【特選】 
デートは七時初漁は初みやげ    山下守
春待つや癌生還の妻に恋      岩田勇
君がそう言うなら春はクリームパン 八田昌代
【入選】 
革ジャンの右肩ばかり濡れて駅   げばげば
好きならば離してはだめ風船    城内幸江
ソーダ水愛も減っていくのかしら  矢入榮留
薫風の学食しずか初デート     折田祐美子
恋も手編みのセーターも解く夜   高津佳子

☆長谷川櫂 選
【特選】 
初恋のレモンソーダ注文中     小林寛久
晴れ予報のバレンタインデーららら 遠藤玲奈
雪こそは真冬の恋のキューピット  峯岸泰希
【入選】 
初恋は三寒四温のもどかしさ    石井秀一
春待つや癌生還の妻に恋      岩田勇
霜柱あなたザクザク恋の音     井上秀子
新しき出会いの春の片思い     紅紫あやめ
失恋を未だ知らざる虹なりき    田中目八
好きならば離してはだめ風船    城内幸江
レース編むやさしい恋の終わり方  綾竹あんどれ
あの人の手紙よく燃ゆ寒昴     澤谷美咲
りんご飴向こうとこっちより舐める 熊本芳郎
シクラメン十八からの想ひ人    益田信行


【第19回恋の俳句大賞】
☆村松二本 選
【特選】
蛤や君の心を開きたい        相沢はつみ
 「蛤や」という詠嘆が斬新。

蚊帳吊つて恋の日暮となりにけり   武田百合
 「恋の日暮」が艶めかしい。

【入選】
飛花落花繋ぎしこの手離すまじ    岡山小鞠
呼び捨てがくすぐったくて小鳥くる  綾竹あんどれ
門限を破るふたりの熱帯夜      矢作輝
手花火の玉の震へる別れかな     山田蹴人
サンダルを二足並べて由比ヶ浜    彩香
このままでいいのと揺れる水中花   星影りこ

☆趙栄順 選
【特選】
好き過ぎて憎らしくなるかき氷    たいらんど風人
 愛憎は裏表の恋。

会いたいって私風邪ひいたって君   くぅ
 本当は彼の愛が醒めているのを知っている私。

雪の中から恋一つ蕗の薹       武田百合
 初々しい恋がひとつ生まれる。

きみと解く連立方程式夕立      澤田 紫
 これからの恋のゆくえを解くような方程式、夕立は突然来る。

死ぬる日もきみのとなりに大昼寝   川辺酸模
 究極の愛のかたちですね。

恋の字の心ぐらぐら揺れて春     酒井春棋
 春なのに恋心が激しく揺れる。

【入選】
お揃いの白のネイルや夏の海     小西美里
熱燗で 娘は父の 恋を知り     河上輝久
雪玉を緩く結んで追いかける     熊本芳郎
古希過ぎて二人揃ひのアロハシャツ  川辺酸模
呼び捨てがくすぐったくて小鳥くる  綾竹あんどれ
図書室の席にぬくもりヒヤシンス   げばげば
あはよくばあなたのことも蛍狩    石村まい

☆長谷川櫂 選
【特選】
ときどきは妻との恋も土用干     川辺酸模
 恋の土用干。この余裕が笑いを生む。相手もそう考えてますよ。

【入選】
孫連れた君と今夜は金魚釣      益田信行
ひなあられ(恋の数だけ食べてよい) 深谷健
ビールって苦いだけじゃん夏の恋   GONZA
私の恋いや私たちの恋晩夏      益田信行
愛の告白どこにでもある稲荷寿司   鍬塚聰子
マスクの上の瞳に恋する春      後藤大
あはよくばあなたのことも蛍狩    石村まい
サングラスかけて目の合う二人かな  永井和子
唇を封づる春の人さし指       長谷川淑子
雷来たり夕立来たり恋来たり     田中目八
春の闇恋は盲目金平糖        安藤亮
桜散るあなたを偲ぶオムライス    遊語明人


【第18回恋の俳句大賞】
【大賞】
あきらめなさい金魚がささやいた恋  高津佳子

☆村松二本 選
【特選】
うららかや調子外れのきみのうた   綾竹あんどれ
道ならぬ恋を弔う花野かな      池谷勝利
【入選】
聖樹の灯あなたは白い嘘をつく    げばげば
老の恋皺の谷間の寒椿        教野道雄
あきらめなさい金魚がささやいた恋  高津佳子
レモンスカツシユそれから新しい恋も 田中目八
狼になれないオレはにゃーと鳴く   千葉文智

☆趙栄順 選
【特選】
あきらめなさい金魚がささやいた恋  高津佳子
生れたての恋やマフラーきつく巻く  山田蹴人
流れ星見てゐる君を見てをりぬ    井出久美子
【入選】
ぶらんこの止まれば君に伝えやう   田中目八
ライオンの像と君待つ聖夜かな    矢作 輝
雑踏に君をみつけてクリスマス    倉森信吉
秋夕焼け明日また逢えるさようなら  大野 喬
小春日やシチューとろとろ恋してる  城内幸江
冬木立抜けてふたりの通学路     森 佳月

☆長谷川櫂 選
【特選】    
アイロンで伸ばす初恋秋麗      伊庭直子
あきらめなさい金魚がささやいた恋  高津佳子
観覧車二人の月の沈みゆく      十音
恋終へし人へぶらんこ貸出中     げばげば
【入選】
私のキューピッドになれ雪礫     村上ヤチ代
春立つや口では勝てぬ恋女房     川辺酸模
百歳になつても君とバレンタイン   石川桃瑪
風船の割れない距離を保つ恋     澤田 紫
忘れ方教えて消えろシャボン玉    吉田里香
狼になれないオレはにゃーと鳴く   千葉文智


【第17回恋の俳句大賞】

【大賞】
花林檎遠くまで来し二人かな       三玉一郎

☆趙栄順 選
【特選】
口笛で答える君へ風光る         伊達紫檀
スイートピー抱くように抱くきみのこと  澤田紫
あなたへとフランス窓を開けて初夏    十音
ギヤマンの氷カランと恋終わる      戸村友美
春風や吾をさらひてくれまいか      鹿沼湖
【入選】
ハンモック君を丸ごと捕まへん      武田百合
還暦の妻投げキッス山笑う        北薗敬
ケチャップで描いたハート聖五月     野井さくら
秋桜の揺れるくちづけ突然に       川合一美
花林檎遠くまで来し二人かな       三玉一郎

☆長谷川櫂 選
【特選】
目の前のあなたが遠き浴衣かな      三玉一郎
【入選】
スマホに君出ぬ日あてどなき草矢     山下守
恋を知り孤独覚えて夏終わる       矢作輝
あのひとは来ない金魚はぶあいそう    げばげば
ハンモック君を丸ごと捕まへん      武田百合
どこに行く?どこへでも二個のヘルメット 小池ひろみ
君のことまだ許せずに夏終わる      五十嵐裕治
夏シヤツの濡れて意外な筋肉質      田中目八
ケアマネに焦がれる母や更衣       辻雅宏
逢へぬ日の祭の中を通り抜く       山田蹴人
切なさや叶わぬ恋の蕾たち        千葉文智
夕立や君の心に掛ける傘         高井はなみ
恋といふ熱帯夜のど真ん中かな      高井はなみ
君去ったあの夏のオレ殴りたい      高津佳子
絶景や君に見とれる夏期講座       野井さくら

☆村松二本 選
【特選】
春愁で片づけられる恋ならば       澤田紫
花林檎遠くまで来し二人かな       三玉一郎

【入選】
夭折の君の思ひ出みな涼し        相川正敏
夏シヤツの濡れて意外な筋肉質      田中目八
告白もせで桜蕊降る中を         永井和子
落花浴びたき耳朶の熱さかな       山田蹴人
新緑やあなたと眠る墓は此処       城内幸江
君がいたあのガラス玉のような夏     森田直樹


【第16回恋の俳句大賞】

【大賞】
はるのゆきはたちのきみが舞いおりる  石浜西夏

☆村松二本 選
【特選】
立春大吉鬼に恋していいですか       村上ヤチ代
蝋梅の香りを歩く二人かな         青沼尾燈子
告白は直訳めいて冬の虹          水野大雅
【入選】
花街に女のかざす時雨傘          山田蹴人
マフラーを巻かれそのまま腕の中      茂る
雑踏に君の笑顔やクリスマス        倉森信吉
偶然を恋の味方に春の風          矢作 輝

☆趙栄順 選
【特選】
右側の手だけだんだんあたたまる      瀧田絆菜
われ映る君の瞳見たしライラック      山下 守
窓に雪とける二人の時間かな        城内幸江
はるのゆきはたちのきみが舞いおりる    石浜西夏
恋を知る少女金魚にうちあけし       高津佳子
【入選】   
立春大吉鬼に恋していいですか       村上ヤチ代
石鹸玉あなたへ息が続かない        三玉一郎
ただ横に居るだけでいい日向ぼこ      髙井珠佐
失恋のベリーショートや冬りんご      鹿沼 湖
同じ月観ている君へLINEして        横山理恵子

☆長谷川櫂 選
【特選】
秋日影イヤホンひとつ肩ならべ       紫檀
泣いて泣いて泣いても生きていた夏     鈴野蒼爽
はるのゆきはたちのきみが舞いおりる    石浜西夏
【入選】
君がゐて僕等二人の聖樹かな        円美々
三日月と金星と僕冬の恋          八田昌代
退屈な男と女春炬燵            武田百合
ありがとうは別れの言葉チューリップ    熊谷温子
亡き妻を想う父の詩冬の雲         宮崎江美
逢いたくて逢いたくなくて雪が降る     野原めぐみ
石鹸玉あなたへ息が続かない        三玉一郎
雪が降るあなたの肩の向こう側       野原めぐみ
ヴィオラヴィオラいつ振り向いてくれますか 石浜西夏
手花火やバケツの底に溜まる恋       渡辺鮎美


【第15回恋の俳句大賞】

俳句大賞 該当作品なし

☆趙栄順 選
【特選】
初蝶やふわりと逃げる君を追い   森教安
蝉時雨君と出会って止みにけり   八ツ田慧
藍浴衣今宵男をぱんと撃つ     石浜西夏
【入選】
恋しくて返す踵や寒の月      清波
しゃぼん玉君より君を知っている  中原壱朋
春の恋 遮断機下りて 遠ざかる  川島英明
守り抜く恋の秘密や生身魂     森凜柚
コロッケをあなたのために夕薄暑  城内幸江

☆長谷川櫂 選
【特選】
まだ居たい 線香花火 落ちるなよ 石王大地
虹二重ふたりの君がゐるやうな   青沼尾燈子
君の手や夏の限りをつないだ手   幸福来々
【入選】
イヤホンの片方もらふ砂日傘    山田蹴人
後ろから不意の目隠し夕涼み    彩香
向こうからカップルの君夏祭    白井百合子
さよならのあとの香水の一瞬    山田蹴人

☆村松二本 選
【特選】
うつくしい嘘に誘はれ春の月    辻雅宏
星に寝て恋の夢見る海月かな    川辺酸模
くちづけのように花火の火をもらう 八田昌代
【入選】
未練絶つ青磁の皿に水羊羹     神久美子
あの人に少年の顔麦畑       小島寿々
晩夏光恋を埋めし砂の城      岩橋春海
シスターに駆け落ちの過去星月夜  森としたか
春障子大人の恋のはじまりぬ    清波
夏の月君の寝息の正しくて     坂本清美
風鈴が鳴ってこの世に情事あり   野原めぐみ
守り抜く恋の秘密や生身魂     森凜柚
コロッケをあなたのために夕薄暑  城内幸江


【第14回恋の俳句大賞】
【大賞】
わたくしの全てが君になり桜      盛武虹色
【選評】「わたくしのすべてが君に」なるということは現実にはあり得ない。しかしそう思い込んでしまうのが恋。(村松二本)
【受賞者のコメント】自分の気持ちを大胆に表した句での受賞を嬉しく思います。これからも俳句を続けていきたいです。(盛武虹色)

☆ 村松二本選
【特選】
わたくしの全てが君になり桜      盛武虹色
あなたかもしれぬ狐火見失ふ      小鞠
カタコトの仏語で恋をして晩夏     澤田紫
蟷螂や束縛してもいいですか      茂る
結婚の報告西瓜ぶら下げて       澤田紫
【入選】
百千鳥二人の恋を囃しけり       川辺酸模
一羽しかおらぬ白鳥君と見る      くにくに
ふるさとに待つ人のゐて冬紅葉     山田蹴人
春の恋一歩一歩がハ長調        粕谷経
カステラのやうな貴方と冬夕焼     城内幸江
初詣夫あるひとの遠会釈        中島紀生
銀山温泉の雪に蕩けて君といる     宮井いずみ
ダイヤモンドダストを二人寝転んで   小島寿々
今宮で見初めし君は残り福       辻雅宏
先輩の机見に行く冬休み        山田蹴人
鼻の先冷たき君にキスをする      森教安
好きな子の胸が気になる赤い羽根    山田蹴人
その人を愛せてゐるか古炬燵      山田蹴人
聖なる夜きれいな靴で逢ひにゆく    山田蹴人
振り向かぬひとだから好きポインセチア 澤田紫
うたかたの恋と知りつつ夏薊      馬岡裕子
大仏の目線のさきの花衣        倉森信吉
あなたとの距離は甘夏ふたつ分     岩崎淳也

☆趙栄順 選
【特選】
マスクならアイラブユーつて言えるのに のはら石英
【選評】マスクをしていれば君に勇気を出して恋の告白ができそうな気がする。コロナの時代でなくとも。
書くことは君のことだけ日記買ふ    中分明美
【選評】日記なら心の中にいる君に語ることができる。長い語らいはゆっくりと恋を育てる。
【入選】
三月や恋と進路の交差点        矢作輝
春浅ききみの机へチョコレート     川辺酸模
彼の人の視線で選ぶ春ショール     粕谷経
マドンナも老いて孫連れ七五三     辻雅宏
たつた今別れてきたの雪払ふ      山田蹴人
十八の君とバイクに冬北斗       鹿沼湖
マフラーに顔をうづめて待つ返事    山田蹴人
文系が理系に恋す冬銀河        川守田京子
綺麗だね秋桜じゃなくて君のこと    加藤清美
夏期講習あなたの横が指定席      水野綾子
ダイヤモンドダストを二人寝転んで   小島寿々

☆長谷川櫂 選
【特選】
妹と言はれて泣いた日の香水      高岡幸子
【選評】女としてみてもらえないのが悲しい。おもしろい恋の局面を描く。
【入選】
夕立後テニスコートに映る君      粕谷経
ダイヤモンドダストを二人寝転んで   小島寿々
あなたとの距離は甘夏ふたつ分     岩崎淳也


【第13回恋の俳句大賞】
・趙栄順 選
【特選】
48  桜鯛下げて娶りし君なりき  川辺酸模
81  サングラス美しい目は見せるべき  小島寿々
92  半世紀二人で過ごし籐寝椅子  川辺酸模
122  まだ君に会わない運命流れ星  杉森 大介
181  火の如き夏のマスクのプロポーズ  椋本望生
【入選】
318  梅雨寒やノート2冊の恋終はる  河野 由美子
379  いい女ふるなんてバカ夏の雨  小島寿々
267  返信の届く速さや雲の峰  石井千鶴
354  卒業の寄せ書きの隅「好きやつてん」  石英子
104  初恋の夢を見てゐるハンモック   川辺酸模
174  白服の君まぶしくて失語症   川辺酸模
64  ブランコや大事な話あとにする  中原壱朋
415  君になら騙されてやる四月馬鹿  辻 雅宏
381  アイスコーヒーとレモンティーと僕と君  藤田ゆりか
74  小走りに君が来る頃青嵐  茂る

・長谷川櫂 選
【特選】
178  星月夜山男さへ妻恋ふる  水科博光
【入選】
186  アロハシャツ二歳で君はいい男  小島寿々
213  ハンカチの木の花きみとゐる時間  石川桃瑪
300  待ちぼうけ五月の神は天邪鬼  小島寿々
381  アイスコーヒーとレモンティーと僕と君  藤田ゆりか
【候補】
13  くだらない男は捨てる青嵐  小島寿々
30  一日が一生となり髪洗ふ  渡邉美愛
59  夫の留守ひとり寝る夜の涼しさよ  川辺酸模
108  気まずくてミルクセーキをかき混ぜる  小島寿々
259  愛の日のフォンダンショコラ溶くる席  石川桃瑪
314  恋がいた桜吹雪の向こう側  星博子
354  卒業の寄せ書きの隅「好きやつてん」  石英子
359  夏季講座恋は電車の一両目  村上ヤチ代
409  夏祭かつての恋と擦れ違ひ  矢作 輝
424  君の瞳へ落ちて行く春の雷  杉森 大介


【第12回恋の俳句大賞】
・趙栄順選
【特選】
在りし日の恋や八月十五日    鹿沼 湖
恋をして薔薇の迷路に迷ひをり  川辺酸模
冴ゆる星みとるる君にみとれをり 永井 美樹
水仙やゆつくり甘くなる時間   城内幸江
満月につながれてゐるふたりなり 佐々木健一
【入選】
彼の人と同じ香水交差点     粕谷 経
春近し恋の予感やポップコーン  水夢
サヨナラの君が見えない花の雨  小島寿々
幾千の恋の欠片の海月かな    川辺酸模
愛醒めし人を落椿のごとく打つ  石英子
ちちろ鳴く君に片耳あづけをり  佐々木健一
恋をして酸素欠乏ゆらゆら金魚  澤田 紫
酔芙蓉あれは優しき嘘と知り   小鞠
遠距離を埋めるふたりの日記かな 青い月
秋扇たゆたふ恋をしまひけり   佐々木健一
冬銀河だけに見られたプロポーズ 茂る

・長谷川櫂選
【特選】
ひと夏の恋にピリオド平手打ち  浦本優也
かきまはす君と私の扇風機    長井亜紀
着ぶくれて彼とおんなじやうな顔 城内幸江
【入選】
春近し恋の予感やポップコーン  水夢
サヨナラの君が見えない花の雨  小島寿々
湯ざめしてあああこの恋煩はし  武田百合
冬立つやからだに残るピアノの音 佐々木健一
老いらくの恋は結構金かかり   米林真


【第11回恋の俳句大賞】
☆趙栄順 選
【特選】
夕立や新しい恋つれてこい 小島寿々
夏蜜柑香る男に惚れちまう 田村美穂
甘くても恋苦くても恋レモン水 明日也
おはようと目覚めし君と初笑ひ 朴文英
【入選】
かざぐるま君への想い空回り 矢作輝
死ぬほどの恋も二度ほど茄子の花 川辺酸模
好きですと言っては負けねチューリップ 鹿沼湖
帰すべきひとを帰して髪洗ふ 澤田紫
まだ肩に君の重さの朧月 椋本望生
喫茶店ポインセチアと待ち人と 佐々木健一

☆長谷川櫂 選
【特選】
きみとゐて心まぶしき雪野かな 武田百合
鯛焼きや恋人たちに焼き上がり 佐々木健一
麦の穂のごとき言葉をもらふ恋 永守恭子
【入選】
田植ゑて二人見上げる宵の星 川辺酸模
ジャスミンティーくるくる恋は終わらない 小島寿々
失恋の指に線香花火かな 鹿沼湖
わが恋を知るや知らずや落とし文 湯浅菊子
友情となりし恋あり遠花火 永井和子


【第10回恋の俳句大賞】
☆趙栄順 選
【特選】
また誰か恋に落ちたる朧かな    川辺酸模
春の風きみの瞳の中のぼく     青沼尾燈子
何度でも恋する庭に赤い薔薇    堤 善宏
子規の忌や恋も野球も赤が好き   中原壱朋
雪つぶて心変わりへ飛んでゆけ   小島寿々
【入選】
記念日はケーキの苺半分こ     いちろう
春風が味方しているプロポーズ   光畑勝弘
鞦韆をおもいきり漕ぐ恋かしら   瀧澤久子
秋晴れやサンドイツチをほめらるる 佐々木健一
白息の二つ重なる観覧車      川辺酸模
訪ね来よ風船葛揺れやまず     佐々木健一
また恋のスタートライン日記買う  小島寿々
春ショールずつとあなたと歩きたく 永井和子
着ぶくれて君の隣に割り込みぬ   上田雅子
君待ちて港の如し月の舟      鹿沼湖

☆長谷川櫂 選
【特選】
恋人の前で弾けるしゃぼん玉    光畑勝弘
無花果や大人の恋の難しさ     いちろう
君はもう振り返らない青き雪    小島寿々
恋心焼いて半熟寒卵        ぐ
嘘をつく君のくちびる花薊     岩田満枝
【入選】
三日ほど妻のをらざる炬燵かな   タカシ
恋の火をおへそにひめておんこの実 佐々木健一
クリスマスイブ初めて入る君の部屋 加々美 登
君の髪すれすれにとぶ草の絮    佐々木健一
まだ少し一緒に居たい晩年の春   田島千鶴子
着ぶくれて君の隣に割り込みぬ   上田雅子
君だけが輝いてをり冬景色     小島寿々
二両目の二つ目のドア春を待つ   矢作輝
*投句数=983句


【第9回恋の俳句大賞】
【大賞】
恋をしてこんなにも春揺れている  城内幸江

☆趙栄順 選
【特選】
緑蔭に君の忘れし日のかけら    佐々木健一
緑陰に恋の記憶が宿っている。たとえ君が忘れても。

死ぬるまで君の隣に大昼寝     川辺酸模
究極の恋。恋の大往生?

恋をしてこんなにも春揺れている  城内幸江
恋のはじめは心が揺れる。春もゆらゆら揺れている。

お互いを呼び捨てにする夏休み   矢作 輝
君との距離が縮まる夏休み。

まだ恋と知らずまどろむサクランボ 小島寿々
果実はゆっくり熟していく。恋もまた。

【入選】
ゆびさきに触るるゆびさき風光る  更紗ゆふ
夏帽子君の形見の笑顔かな     上田雅子
君のゐた青春の日よハンモック   川辺酸模
初恋の少年ひようと草矢打つ    川辺酸模
雪道の 君の靴跡 踏んでみる   加々美 登
告白のあとはがりがりかき氷    金子加行
また一歩君の夕餉の涼しき灯    佐々木健一
桜よりやわらかそうな君の肌    会田卓也
サイダーの泡はじけるよキミが好き 船越寿子
プロポーズゆっくり林檎剥きながら 中原壱朋

☆長谷川櫂 選
【特選】
愛されてアスパラガスにかこまれて 佐々木健一
恋をして春こんなにも揺れている  城内幸江
ぶらんこや君との距離が埋まらない 松浦麗久
下手くそな恋のままなる夏をはる  金子加行
告白の勇気いちご五百個分     相沢はつみ
【入選】
ひらききる細胞百合の花粉散る   佐々木健一
君の乗るボート追うのも離るるも  長井亜紀
抱きしめてくれぬあなたのサングラス永井和子
恋歌のひとつも知らず夏の海    佐々木健一
髪を梳く君の隣で夕涼み      加々美 登
遠雷や君を忘れる汽車の旅     鹿沼 湖
あなたへの片道切符カンナ燃ゆ   永井和子
君は今幸せなのか虹ふたつ     光畑勝弘
しあはせや君のとなりの夕涼み   川辺酸模
この恋を誰も知らない月見草    小島寿々
白シャツの君をいつでも見てしまふ 夏井通江

*投句数=1223句


【第8回恋の俳句大賞】
【大賞】
君とゆく君のふるさと山桜      山中すみえ

☆趙栄順選
【特選】
君とゆく君のふるさと山桜      山中すみえ
(桜咲くふるさとに行けば幼い日の君に逢える。そして二人の将来も見える)

君の目の奥の宇宙に気づく夏     橋本朝
(恋をしても人は一人。君を一個の人間として尊重する)

恋といふ重荷おろして蟇       野上卓
(一抹の寂しさと安堵と)

初弓の的ははるけき君の胸      佐々木まき
(まだ始まらない恋。初々しくも切ない思い)

毛糸編む恋知り初めし娘かな     丸亀葉七子
(思春期の娘を見るお父さん?それともお母さんかな?はらはらしながらも温かいまなざし

【入選】
初めての恋に悴む二人かな      川辺酸模
初詣恋人がまだできません      小島寿々
初雪や恋とも知らず消えました    加藤正子
春ショール肩に君の手あるような   加藤正子
野を駆けて君を攫ひにゆく四月    光畑勝弘
星冴ゆる地球にふたり観覧車     川辺酸模
一人過ごす 恋は休みのクリスマス  加々美 登
日向ぼこようやく君と打ち解けた   横溝麻志穂
うかうかと恋に落ちたる海鼠かな   川辺酸模
恋ひとつ跳ね越えてゆく白兎     佐々木健一

☆長谷川櫂選
【特選】
珈琲をくるくる君が居ない冬     小島寿々
君とゆく君のふるさと山桜      山中すみえ

【次点】
大きめのコートに二人入りけり    相沢はつみ
君の目の奥の宇宙に気づく夏     橋本朝

【入選】
僕から俺に変え告白する夏      中原壱朋
あなたへと五百マイルの大夕焼    矢作輝
雪だるま あなたと共に 消えていた 近藤己順
キスよりもホットココアが欲しい風邪 小島寿々
鈍感な背にビーサンを投げつける   内藤保幸

*投句数=944句


【第7回恋の俳句大賞】
【大賞】
君といふ青き島へと遠泳中       稲垣雄二

☆趙栄順選
【特選】
君といふ青き島へと遠泳中       稲垣雄二
・憧れの青き島。はるかにあればこそ魚のようにどこまでも泳いでいく。
【次点】
洞窟(がま)深く眠る恋かなひめゆり忌  川辺酸模
・戦争で断ち切られた女学生の恋。壮絶。
婚約のままの歳月広島忌        園田靖彦
・原爆で生き別れになったのだろうか。歳月の重さ、切なさ。
マスカットひとつぶごとに恋の味    岡 莞弥
・マスカットの青さが初々しい。初恋の味。
虹色の大きな恋のしゃぼん玉      岡 莞弥
・しゃぼん玉の淡さ、儚さ。虹色が美しい。
【入選】
少年は恋秘めしまま卒業す      中井一雄
しなやかに恋を貫きサンドレス    稲垣雄二
デザートのメロンすまして初デート  矢作 輝
とびやすき恋のはじめの夏帽子    浅木ノヱ
プロポーズされそうなほど星月夜   岡 莞弥
紫陽花の花びらみんな君の顔     加藤正子
春うらら恋が下手でも生きてます   岡 莞弥
七月の丘を上れば君が待つ      小島寿々
春林のなかの一樹の君に触れ     永守恭子
初恋の骨を拾ふや蝉しぐれ      松宮京生子

☆長谷川櫂選
【特選】
君といふ青き島へと遠泳中      稲垣雄二
・美しい自然があって、夢があって、恋がある。句の内容は少年か青年、句の腕前は老練な大人。
【次点】
空つぽの香水の瓶恋ひとつ      山中澄江
【入選】
美しき空きみとながめる夏よ風よ   磯見花
さよならはこいのかけらよあきのこゑ 岡 莞弥
恋人も夏が過ぎればただの人     岡 莞弥
束の間の恋に溺れる裸かな      岡 莞弥
ぬばたまの一夜を過ごし髪洗ふ    岡 莞弥
初めての朝が別れの夏となる     岡 莞弥
恋の予感す白い靴おろしけり     丸亀葉七子
夏蝶や水の香たどり胸の上      佐々木健一
ぶらんこは君に捨てられ揺れてゐる  稲垣雄二

*投句数=802句


【第6回恋の俳句大賞】

【大賞】
もうゐないあなたがふぶくさくらかな  三玉一郎

長谷川櫂 選

【特選】
会ひにゆく百万本の冬木立  三玉一郎
冬木立の中を急ぐ人。百万本に迫力がある。

たまには夫にも愛のチョコレート  明日也
灯台下暗し?大事な人をときどき思い出す。

夏の蝶見てゐる君を見て居りぬ  石上佐知子
この控えめな感じを忘れないでいたい。男も女も。

もうゐないあなたがふぶくさくらかな  三玉一郎
花吹雪となって降りしきるあなたの思い出。あなたのかけら。

目つむれば君といた冬2000年(ミレニアム)  永友萌
十七年前の追憶。冬が切ない。

【入選】
お別れの真昼のクリスマスツリー  鴻池貴光
heavy級 味わう 愛のチョコレート  田村美香
シュプールを描いて彼に真っしぐら  渡部葉子
恋をしてやさしい顔の雪だるま  城内幸江
初雪や隣に君のゐる奇跡  石上佐知子
恋心まだありますかふかし藷  椋本望生
再会は二十五回の冬のあと  矢作輝
桜貝ふたりで海を見ていた日  斉藤真知子
脱ぐために着る夏服をえらんでる  早川高典
花が語りだしたら恋のはじまり  近藤いずみ

趙 栄順選

【特選】
君はいま春のひかりとなり来たる  斉藤真知子
恋人は春のひかりをまとって。

名前呼ぶバレンタインの日やそつと  三玉一郎
まだ告白できない人の名か、秘めたる恋心。

初富士や君かたはらにゐればこそ  木下洋子
愛する人が傍らにいてくれてこその富士のめでたさ。

もうゐないあなたがふぶくさくらかな  三玉一郎
花吹雪のなかで思う懐かしいひと。桜に宿る力。

好きな人いることが好きラ・フランス  早川高典
恋に恋する年頃の初々しさ

【入選】
悴みて告げ得ぬ恋のありにけり  川辺酸模
恋心まだありますかふかし藷  椋本望生
見合する気のなささうなラ・フランス  菅原晋也
大胆に薔薇切り取るや恋始め  永井和子
まろび寝て恋を夢見る海鼠かな  川辺酸模
恋あまた思ひ出となり毛糸編む  斉藤真知子
君とならのぼつてみたき雲の峰  長井亜紀
つかまえて私あなたの兎です  小島寿々
花火観る君の瞳の花火見る  矢作輝
花が語りだしたら恋のはじまり  近藤いずみ


【第5回恋の俳句大賞】

【大賞】
虹たちて恋びとたちの地球かな  岡崎陽市

*選評
地球上のいろんな場所に立つ虹と恋人たちが見えてくる。いまさまざまな問題を抱えている地球。それでも地球はこんな星なんだ、こんな星であって欲しいという願いが一句になった。希望をもちつづけることこそが希望。(長谷川櫂)
虹がたちシャガールの恋人たちのような絵が生まれる。夢のある恋の句(趙栄順)

長谷川櫂選
【特選】
虹たちて恋びとたちの地球かな  岡崎陽市
とりあえず暑い暑いと恋はじめ  野上卓
みつ豆や君には君の好きな人  イーブン美奈子
約束がゆつくり歩くはだしかな  三玉一郎
好きだったことは後悔しない 夏  小島寿々
【入選】
この恋も初めての恋さくらんぼ  川辺酸模
見せたうて水着を買うて来たんやで  藤田貞利
なつかしや恋路の果ての日なたぼこ  瀧澤久子
出目金魚一匹連れて告白す  前田みづえ
恋秘めてキャンプファイヤー囲みけり  岡崎陽市
長すぎた春の終りを告げる鐘  光畑勝弘
蛍の帰してくれぬふたりかな  三玉一郎
落ちてみる真夏の恋の落とし穴  藤森荘吉
君となら素顔のままで鳳仙花  斉藤真知子
振られてはまた恋をして苺食う  鎌田彩海
遠花火逢いたい人は一人だけ  城内幸江
不意にくる夕立君の傘にいり   藤田ゆりか
恋の浜敵も味方もサングラス  稲垣雄二

趙栄順選
【特選】
恋心あれば鳴るはず草の笛  武田百合
*恋人のふく草笛はまるで恋を語るよう。何とかして鳴らしたい男心。
虹たちて恋びとたちの地球かな
*虹がたちシャガールの恋人たちのような絵が生まれる。夢のある恋の句。
夢の世の恋に揺るるや草の花  川辺酸模
*現世では叶わなかった恋。草の花となって揺れている。
恋の浜敵も味方もサングラス  稲垣雄二
*夏の浜辺は恋のさや当てが盛ん。サングラスがユーモラス。
うたた寝て恋の水母に刺されけり  川辺酸模
*恋の始まりはいつも唐突。うたた寝をしている場合じゃない。
【入選】
初めてのキス風花の味がした  夏井通江
恋なくば空しき浮世茄子の花  川辺酸模
君の部屋金魚になりて息ひそめ  小島寿々
少しずつ恋が溶けてく日永かな  小島寿々
したたかに恋にやつれて冷素麺  武田百合
君に会ひ恋するために生まれけり  木下洋子
桑の実や夫は農夫の手もて抱く  夏井通江
恋失せて天下泰平昼寝かな  川辺酸模


【第4回恋の俳句大賞】

【大賞】
君を知りきのふの恋を卒業す  篠原隆子

長谷川櫂 選
【総評】
人類は誕生以来、恋をしてきた。その時間の重みを忘れさせるような新鮮な恋の句を選びました。

【特選】
父となる君にも愛のチョコレート  斉藤真知子
結婚し、やがて子どもが生まれる二人。いつまでも互いに出会ったときのような恋心を抱いている。

君を知りきのふの恋を卒業す  篠原隆子
前の恋を忘れられずにいたのだろう。それが君を一目見たとたん。

セーターの編み目で恋が笑ってる  小島寿々
セーターを頭からかぶって恋人が笑っているのか。それともセーターが笑っているのか。思いをこめてセーターを編んでいるのか。

【入選】
失恋を振ってやったと夏の雲  高橋良邦
出初式私の彼は今梯子  山縣敏夫
霜柱ぎゅうっと踏んで忘れよう  小島寿々
恋なのか失恋なのか冬の蝶  葛岡昭男
熱燗や恋人までの射程距離  浅木ノヱ
墓場まで持ってゆく恋いわし雲  鈴木歌織
恋は今静かな暮らし水仙花  夏井通江
告白の勇気をポインセチアより  織田亮太朗
風花や忘れたわけじゃないのです  小島寿々
手の中に君の手のあり春を待つ  影山

趙栄順 選
【総評】
今回も様々な恋模様をみせていただいた。大賞の句、「君を知りきのふの恋を卒業す」には爽やかさと共に深々とした余韻がある。

【特選】
恋をする君が着てみな花衣  篠原隆子
恋人への手ばなしの讃歌、若さが眩しい。

恋は今静かな暮らし水仙花  夏井通江
恋の季節を遠くした女人か、水仙花の静謐。

恋失せて磯の海鼠となりゐたり  川辺酸模
失恋した男か、海鼠の哀愁と滑稽。

【入選】
告白のあとは朧のふたりかな  三玉一郎
天の川君の処へ泳ぎ切る  山縣敏夫
バレンタインデーまさかの恋が始まりぬ  篠原隆子
吾もまた氷る覚悟の逢瀬かな  三玉一郎
君を知りきのふの恋を卒業す  篠原隆子
蓬莱やいよよこれから共白髪  木下洋子
マフラーと真っ赤な頬と白い息  稲井千紗
秋晴れの今日はあなたをひとりじめ  水野真由美
紫陽花の色にあふるる恋心  吉川弘子
晩婚や秋果大事に育てゆく  山本桃潤


【第3回恋の俳句大賞】
初恋の真つ只中や扇風機  森篤史

恋にはさまざまな恋がありますが、大賞となると、爽やかでかつ大柄な感じが必要です。その点、この句はまさにぴったりの句でした。(長谷川櫂)

恋の熱を冷ます扇風機ではあるまい。風の爽やかさ、勢い…。初恋ならでは。(趙栄順)

*趙栄順選
【特選】
初恋や二人で覗く蝌蚪の国  山本桃潤
これも初恋。蝌蚪の国はメルヘンではない。先の見えない恋に対する漠とした怖れ、不安。
あんなやつまつぴらごめんさくらんぼ  北側松太
「まつぴらごめん」と言いながら憎みきれないあいつ。いじらしい女(男?)心。
恋しさと寒さは背中からどつと  佐々木まき
「背中からどつと」に恋の切実さが感じられる。
【入選】
ほかほかの鯛焼一つほどの恋  北側松太
こんな恋なら長続きしそう。
唇の好きと動けり夏の海  川辺酸模
波の音が肝心な言葉を消していく。
桜貝拾うて恋となりにけり  北側松太
桜貝の魔法?
ハンカチに昔の恋の残りゐる  和田康
慎み深い昭和の恋。
掬っても掬っても恋落ちる夏  小島寿々
恋は厄介。どうにも成就出来ない恋。
抽斗の奥の恋文遠花火  小島寿々
追憶の恋。遠花火が思い出させる。
罪深き恋となりたる扇かな  北側松太
白秋でしょうか。それとも立原正秋?扇が意味深。
駅で逢ひ駅で別るる恋いくつ  佐々木まき
渋谷、新宿、東京駅?都会のドライな恋模様。
すき焼きやこれからもつと君を知る  今野浮儚
プロポーズの殺し文句。湯豆腐じゃだめ。
この恋の行方見えたり夕端居  佐々木まき
恋をすると目がかすむ。でもある時ふと視力がもどる。見えてきてしまう夕端居。

*長谷川櫂選
【特選】
初恋の真つ只中や扇風機  森篤史
ハンモック寝そべり恋を待っている  小島寿々
ただ恋とありますが、次の恋にちがいありません。恋を失くしてあせるでもなく、あわてるでもなく、気怠そうに寝そべって余裕が感じられます。
蜜豆にきのうの恋がかくれんぼ  小島寿々
蜜豆に寒天や蜜柑やサクランボや豆が入っている。そのなかに過ぎ去った恋も隠れていそう。「きのうの恋」という見えないものを見えるように詠んでいます。
【入選】
八月三十二日へラブレター  織田亮太朗
夏の果破れた恋はピザに入れ  小島寿々
ほかほかの鯛焼一つほどの恋  北側松太
なんとなく恋愛上手ところてん  和田 康
あんなやつまつぴらごめんさくらんぼ  北側松太
失恋の身に追討ちの暑気あたり  北側松太
恋の果て妻のお襁褓を替えて夏  山本桃潤
すき焼きやこれからもつと君を知る  今野浮儚
香水や二度目の恋にある余裕  森篤史


【第2回恋の俳句大賞】
告白は直球勝負蝉時雨        佐藤日田路

<作者のコメント>
大賞なるもの、はじめていただきました。メールでのお知らせに、驚くとともに、心から嬉しく思いました。 「亜流里(あるさと)」という地元の句会で俳句をはじめ、10年になります。 今回の句は、基本に返り、素直に詠ませていただきました。気持ちの伝わる俳句を目指し、今後とも励みたいと思います。

*長谷川櫂選
【特選】
初恋の人を検索冬ごもり       藤岡美恵子
その人はいまどうしているか、ちょっと気になるのだ。

告白は直球勝負蝉時雨        佐藤日田路
まさに直球の句。

好きの文字ポケットに突っ込んで冬  小島寿々
少年の面影がある。

【入選】
恋をせしこともはるかや目刺焼く   斉藤真知子
逃げ水を追ふやうな恋もう二年    辻 雅宏
それつてプロポーズなのかき氷    北側松太
初恋の二人はピンクのこんぺいとう  小野田里緒
隣あひあたる焚火に割り込まれ    佐々木まき
百万遍愛を唱える牛蛙        佐藤日田路
マスクして恋の瞳となりにけり    山本桃潤
恋の日が輝いてゐる初暦       篠原隆子
新雪にシュプール描き恋の日よ    矢野京子
女郎蜘蛛恋の二人に降りて来し    北側松太

*趙栄順選
【特選】
湯豆腐の湯気に隠れて恋の顔     今野浮儚
恋する人の顏は、単純ではない。ときに幸せが、ときに苦悩が、あるいは鬱屈が見え隠れする。この「恋の顏」。含羞を知る中年の男性ではないかと想像するが、如何?「湯豆腐の湯気」がよく働いて、この句に深みを与えている。

君はもう恋をしてゐる桜餅      石川桃瑪
この断定は、恋人に対する告白か、あるいは暗示か。逃げも隠れもない、体当たりの清々しさが好ましい。「桜餅」が、この句に清潔感と若々しさを添えている。

結婚といふお雑煮のやはらかさ    三玉一郎
この句に、恋の生々しさはない。だが、結婚が恋を育て、熟成させた結果だとすれば、夫婦の長い歳月が育てた結婚の形も自ずと恋の名残を留めている筈だ。「お雑煮のやわらかさ」。実感であろう。

【入選】
それつてプロポーズなのかき氷    北側松太
雪つぶて弾けはじまる二人かな    山中澄江
すれ違う階段バレンタインデー    宮崎江美
春愁のひとつに待つといふことも   豊田喜久子
冷やっこ長女と恋の話など      山本新
告白は直球勝負蝉時雨        佐藤日田路
恋をしてあらほろ苦の木の芽和    北側松太
ふらここに揺れゐてしづか恋心    北側松太
まつすぐに胸に飛び込む冬帽子    今野浮儚
春立つや妻を名前で呼んでみる    村松二本


【第1回恋の俳句大賞】
白玉や次の恋までひと休み      高角みつこ
◆次点
恋ひとつ香水瓶に封印す       持田公子
誰よりも君まぶしくてサングラス   趙栄順
◆入選句
これがかの白馬の王子ちゃんちゃんこ 佐々木まき
老いらくの恋の始まる日向ぼこ    横山幸子
満天の星いつせいに飛んで恋     篠原隆子
外套に炎包みて逢いにゆく      神谷宣行
初恋や木莓の菓を摘むごとく     増田竹廣
バレンタインデー回るや大観覧車   飛岡光枝
ひれゆれて恋の金魚となりにけり   飛岡光枝
夏椿誰も知らない恋をして      飛岡光枝
老いてなほ胸ときめかす一賀状    豊田喜久子
恋の日やともに白髪となりてをり   矢野京子
百戦の恋の果てなる羽抜鶏      萬燈ゆき
ポケットからぶつきら棒に恋のチョコ 北側松太
水蜜桃愛のごとくに熟しけり     趙栄順