俳句 季語 出典
バスを待ち大路の春をうたがはず 鶴の眼
あえかなる薔薇撰りをれば春の雷 春雷 鶴の眼
夜桜やうらわかき月本郷に 鶴の眼
昼顔のほとりによべの渚あり 昼顔 鶴の眼
草負うて男もどりぬ星祭 星祭 鶴の眼
かなかなに母子の?のすきとほり かなかな 鶴の眼
百日紅ごくごく水を呑むばかり 百日紅 鶴の眼
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ 秋風 鶴の眼
寒卵薔薇色させる朝ありぬ 寒卵 鶴の眼
雪嶺よ女ひらりと船に乗る 雪嶺 鶴の眼
桜餅闇のかなたの河明り 桜餅 風切
初蝶やわが三十の袖袂 初蝶 風切
花冷の顔ばかりなり雲の中 花冷 風切
花ちるや瑞々しきは出羽の国 落花 風切
葭雀二人にされてゐたりけり 葭雀 風切
硯の上水迸れ思ひごと 硯洗ふ 風切
朝顔の紺のかなたの月日かな 朝顔 風切
槇の空秋押移りゐたりけり 風切
寒椿つひに一日のふところ手 寒椿 風切
霜柱俳句は切字響きけり 霜柱 風切
雁やのこるものみな美しき 病鴈
秋の夜のオリオン低し胸の上 秋の夜 病鴈
秋風や夢のごとくに棗の実 秋風 病鴈
合歓今はねむり合すや熱の中 合歓 病鴈
雷落ちて火柱みせよ胸の上 病鴈
遥かなるものばかりなる夜寒かな 夜寒 病鴈
秋の夜の俳諧燃ゆる思かな 秋の夜 病鴈
秋の夜の憤ろしき何々ぞ 秋の夜 病鴈
プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ 石田波郷句集
秋づくと昆虫の翅想はるる 秋めく 石田波郷句集
雀らも海かけて飛べ吹流し 吹流し 風切以後
早梅やひとりたのしき鳰 早梅 風切以後
風雲の少しく遊ぶ冬至かな 冬至 雨覆
焼跡に透きとほりけり寒の水 寒の水 雨覆
細雪妻に言葉を待たれをり 細雪 雨覆
束の間や寒雲燃えて金焦土 雨覆
はこべらや焦土のいろの雀ども はこべら 雨覆
月うるむ青饅これを忘るまじ 青饅 雨覆
道すがら拾ひし菖蒲葺きにけり 菖蒲 雨覆
蚊のこゑのまつはり落つる無明かな 雨覆
六月の女すわれる荒筵 六月 雨覆
おもかげや二つ傾く瓜の馬 瓜の馬 雨覆
勿忘草若者の墓標ばかりなり 勿忘草 雨覆
白桃や心かたむく夜の方 雨覆
雁の束の間に蕎麦刈られたり 雨覆
風の日や風吹きすさぶ秋刀魚の値 秋刀魚 雨覆
葛の花母見ぬ幾年また幾年 葛の花 雨覆
草の穂の飛びきて熱き顔の前 草の穂 惜命
優曇華や昨日の如き熱の中 優曇華 惜命
妻よ我が短日の頬燃ゆるかな 短日 惜命
天地に妻が薪割る春の暮 春の暮 惜命
胸の上に雁行きし空残りけり 惜命
春夕べ襖に手かけ母来給ふ 春の夕 惜命
蚕豆の花の吹き降り母来てをり 蚕豆の花 惜命
きらきらと八十八夜の雨墓に 八十八夜 惜命
えごの花一切放下なし得るや えごの花 惜命
金の芒はるかなる母の禱りをり 惜命
鰯雲ひろがりひろがり創痛む 鰯雲 惜命
雪はしづかにゆたかにはやし屍室 惜命
梅も一枝死者の仰臥の正しさよ 惜命
七夕竹惜命の文字隠れなし 七夕 惜命
朱欒割くや歓喜の如き色と香と 朱欒 惜命
風花や胸にはとはの摩擦音 風花 惜命
かすかにも胸いたみつつ去年今年 去年今年 春嵐
手花火を命継ぐ如燃やすなり 手花火 春嵐
唐黍焼く母子わが亡き後の如し 唐黍 春嵐
泉への道後れゆく安けさよ 春嵐
暫く聴けり猫が転ばす胡桃の音 胡桃 春嵐
蛍火や疾風のごとき母の脈 蛍火 春嵐
鷹の巣のひとり高しや芽立前 鷹の巣 春嵐
春雷や芽を解きいそぐななかまど 春雷 酒中花
水を飲む猫胴長に花曇 花曇 酒中花
妻在らず盗むに似たる椿餅 椿餅 酒中花
壺焼やいの一番の隅の客 壺焼 酒中花
ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 椿 酒中花
釣堀に水輪あふれぬ花の雨 花の雨 酒中花
灯を入れて葭戸透くなりどぜう鍋 どぜう鍋 酒中花
よろこびて囃す雀や袋掛 袋掛 酒中花
沙羅の花捨身の落花惜しみなし 沙羅の花 酒中花
沙羅の花緑ひとすぢにじみけり 沙羅の花 酒中花
柿食ふや命あまさず生きよの語 酒中花
秋行くとオリーブ林の銀の風 秋行く 酒中花
生涯にひとたび会ひき水引草 水引草 酒中花
暮れはててなほ鳴く蝉や敗戦日 敗戦日 酒中花
妻の座の日向ありけり福寿草 福寿草 酒中花
いつまでも老いぬあはれや切山椒 切山椒 酒中花
春雪三日祭の如く過ぎにけり 春の雪 酒中花
はるかなる地上を駆けぬ猫の恋 猫の恋 酒中花
木移りをしきりに鳩や西行忌 西行忌 酒中花
仏生会檪は花を懸けつらね 仏生会 酒中花
雪降れり時間の束の降るごとく 酒中花
蛍籠われに安心あらしめよ 酒中花以後
わが死後へわが飲む梅酒遺したし 梅酒 酒中花以後
桃洗ふ双手溺れんばかりなり 酒中花以後
ジンジヤの香夢覚めて妻在らざりき ジンジヤの花 酒中花以後
今生は病む生なりき烏頭 烏頭 酒中花以後
無花果食ふ月に供へしものの中 無花果 酒中花以後
昨日より今日むさぼりぬ次郎柿 酒中花以後