夏野(なつの)三夏
【子季語】
夏野原、夏の原、青野、卯月野、五月野
【解説】
夏野といえば美ヶ原とか富士の裾野など、広々としたところが思い描がかれる。風が渡ると青々と生い茂った草が、いっせいに靡いて大海原のようでもある。
【例句】
巡礼の棒ばかり行く夏野かな
重頼「藤枝集」
馬ぽくぽく我を絵に見る夏野かな
芭蕉「水の友」
もろき人にたとへむ花も夏野かな
芭蕉「笈日記」
秣負ふ人を枝折の夏野哉
芭蕉「陸奥鵆」
我ひとり行くかと思ふ夏野かな
二柳「やまかけ集」
一すぢの道はまよはぬ夏野かな
蝶夢「露の一葉」
絶えず人いこふ夏野の石一つ
正岡子規「子規句集」
夏の行きつくしぬ大河横たはり
石井露月「露月句集」
ぐいぐいと山退いてゆく夏野かな
高田正子「玩具」