祭(まつり)三夏
【子季語】
夏祭、神輿、渡御、山車、祭太鼓、祭笛、宵宮、宵祭、陰祭、本祭、樽神輿、祭囃、祭提燈、祭衣、祭舟
【解説】
単に祭といえば都市の神社の夏祭をさす。悪疫退散を目的とする。この点、秋に田園の神社で行なわれる秋祭(収穫祭)と異なる。山車や鉾、神輿などの巡行があり、舞や奏楽などの奉納が行われる。境内や門前には夜店が立ち並び、宵宮から祭り当日にかけて多くの人でにぎわう。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【実証的見解】
夏は疫病が多く、それをもたらすものは怨霊と考えられていた。その怨霊の退散を願うのが夏祭りである。神の来臨を待って祭は始まるが、来臨は夜間であるとされ、宵宮から祭りが始まる。神輿や鉾は地上に降りてきた神の乗り物であり、これに笛や太鼓の祭囃子が付き添って巡行がなされる。
【例句】
酔ひ臥して一村起きぬ祭かな
大祗「太祗句選後篇」
菅原や御興太鼓の夜の音
鬼貫「仏の兄」
象潟や料理何食ふ神祭
曽良「奥の細道」
里の子の宿宮にいさむ鼓かな
其角「華摘」
大雨に獅子を振りこむ祭かな
村上鬼城「鬼城句集」
万燈を消して侘しき祭かな
村上鬼城「鬼城句集」
値段立つ繭天皇の祭かな
菅原師竹「菅原師竹句集」
驟雨過ぎて又囃す湖上祭かな
吉田冬葉「冬葉第一句集」
隣村の疲弊目に見る祭かな
島田青峰「青峰集」
ひとの渦おほきな神輿のせゆける
高田正子「玩具」