月(つき)三秋
【子季語】
四日月、五日月、八日月、十日月、月更くる、月上る、遅月、月傾く、月落つ、月の秋、月の桂、桂男、月の兎玉兎、月の蛙、嫦娥、孀娥、月の鼠、月の都、月宮殿、月の鏡、月の顔、胸の月、心の月、真如の月、袖の月、朝月日、夕月日、月の出潮、月待ち、昼の月、薄月、月の蝕、月の暈、月の輪、月の出、月の入、月渡る、秋の月、月夜、月光、月明、月影、月下、上弦、下弦、弓張月、半月、有明月
【関連季語】
春の月、夏の月、盆の月、名月、後の月、冬の月
【解説】
秋の月である。春の花、冬の雪とともに日本の四季を代表する。ただ月といえば秋の月をさすのは、秋から冬にかけて空が澄み、月が明るく大きく照りわたるからである。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
北山にたなびく雲の青雲の星離れ行き月を離れて 持統天皇『万葉集』
こぞ見てし秋の月夜は照らせども相見し妹はいや年さかる 柿本人麻呂『万葉集』
あまの原ふりさけ見れば春日なるみかさの山に出でし月かも 安倍仲麿『古今集』
【実証的見解】
月は地球に最も近い天体であり、太陽に次いで明るい星である。月は満ちたり欠けたりしながら、毎日その姿を変え、約二十九日半で元の姿に戻る。旧暦の太陰太陽暦は、この月の満ち欠けをもとにした暦であり、月が元の姿に戻る約二十九日半をひと月とする。新月が朔日(一日)で満月がだいたい十五日となる。したがってどの月も、満月は十五日ころになる。月の形は新月から三日月、上弦の月、満月、下弦の月(弓張月)、新月と変化する。
【例句】
鎖(ぢやう)あけて月さし入れよ浮御堂
芭蕉「笈日記」
月さびよ明智が妻の話せん
芭蕉「勧進牒」
われをつれて我影帰る月夜かな
素堂「其袋」
声かれて猿の歯白し峰の月
其角「句兄弟」
家買ひて今年見初むる月夜かな
荷兮「炭俵」
月に来よと只さりげなき書き送る
正岡子規「新俳句」
敵といふもの今は無し秋の月
高浜虚子「六百句」
月の庭ふだん気附かぬもの見えて
高浜虚子「六百五十句」
月さして一間の家でありにけり
村上鬼城「雑詠選集」
灯を消すやこころ崖なす月の前
加藤楸邨「颱風眼」
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ
星野立子「立子句集」
奥三河芋の葉にのる月夜かな
森澄雄「白小」
黒猫の子のぞろぞろと月夜かな
飯田龍太「山の木」
月祀る万の炎をたたしめて
高田正子「花実」