兎(うさぎ)三冬
【子季語】
越後兎/野兎/飼兎/黒兎
【解説】
兎は年中野山にいるが、「兎狩」が冬季に行なわれたことより冬の季語となっている。野兎の中には、冬になると保護色で純白になる種類もある。
【科学的見解】
ウサギ(ニホンノウサギ)は、ウサギ目(兎目)ウサギ科の哺乳類で、関東から九州までの太平洋側を中心にキュウシュウノウサギ、東北から中国地方日本海側中心にトウホクノウサギ、新潟県佐渡島にサドノウサギ、島根県隠岐諸島にオキノウサギの四亜種に分けられている。
それらは、人里近くの低地から山地までに生息し、草地や森林、伐採跡地などに生育している植物の葉や新芽、樹皮などを採食している。活動は夜間が中心で、巣は作らないため、昼間は藪の中や切り株及び倒木の下などで身を隠して休息している。糞は、一センチメートルほどの扁平な球形をしており、植物食のため未消化の繊維かすが詰まっている。体色は全身灰褐色から茶褐色であるが、冬の寒さの厳しい積雪地域の亜種(トウホクノウサギとサドノウサギ)は冬季に耳先を除き全身白色となる。
近縁の在来種としては、北海道にのみ生息するエゾユキウサギが知られており、また分類的には離れてしまうが、鹿児島県奄美大島と徳之島にはアマミノクロウサギが生息していて国の天然記念物に指定されている。外来種としては、西洋のアナウサギを家畜化して生み出されたカイウサギが移入され、ペットとして飼育されているほか、一部の離島(主に無人島)などでは野生化しているとのことである。(藤吉正明記)
【例句】
穂すゝきのなみ飛越ゆる兎かな
大原其戎「俳諧明倫雑誌」
吹越に大きな耳の兎かな
加藤楸邨「吹越」