落葉(おちば)三冬
【子季語】
名の木落葉、落葉の雨、落葉の時雨、落葉時、落葉掃く、落葉掻く、落葉籠、落葉焚く
【解説】
晩秋から冬にかけて、落葉樹はすべて葉を落とす。散った木の葉ばかりでなく、木の葉の散る様子も地面や水面に散り敷いたようすも表わす。堆肥にしたり、焚き火にしたりする。
【科学的見解】
常緑樹と落葉樹で落ち葉の時期は異なる。一般的に落葉時期は、秋をイメージする人が多いと思われるが、全ての葉を秋に落とすものは落葉樹である。落葉樹の葉の使用期間は、一年以内である。一方、常緑樹は、葉の寿命が一年以上であり、一年を通して少しずつ落葉させているが、多くの葉が落ちる時期は新葉が出た後の春から初夏にかけてである。どちらにしても、使い終わった葉を落とす前には、葉内の栄養を体の方へ戻すために、葉内の緑色の色素であるクロロフィルを分解し、その構成元素の一つである窒素を再吸収する。樹木は、葉の付け根にある葉柄内に離層を形成し、葉を切り離す。(藤吉正明記)
【例句】
宮人よ我名をちらせ落葉川
芭蕉「笈日記」
留守のまにあれたる神の落葉哉
芭蕉「芭蕉庵小文集」
百歳(ももとせ)の気色を庭の落葉哉
芭蕉「真蹟画賛」
岨(そば)行けば音空を行く落葉かな
太祗「太祗句選」
落葉して遠く成(なり)けり臼の音
蕪村「蕪村自筆句帳」
西吹けば東にたまる落ば哉
蕪村「蕪村自筆句帳」
あふむいてながむる明日の落葉かな
也有「蘿葉集」
わが庵は榎ばかりの落葉かな
樗良「樗良発句集」
吹き上げて塔より上の落葉かな
夏目漱石「漱石俳句集」
吹きまろぶ落葉にしかと大地あり
長谷川素逝「歴日」
落葉掃き了へて今川焼買ひに
川端茅舎「白痴」
落葉すやこの頃灯す虚空蔵
芝不器男「不器男句集」
寝てよりの落葉月夜を知つてをり
森澄雄「四遠」
手がみえて父が落葉の山歩く
飯田龍太「麓の人」
落葉の夜歌仙これより恋の部へ
飯田龍太「遅速」
落柿舎の柿の落葉のころに又
長谷川櫂「初雁」