陽炎(かげろう、かげろふ)三春
【子季語】
野馬、糸遊、遊糸、陽炎燃ゆ、陽焔、かげろひ、かぎろひ
【解説】
地面から立ちのぼる蒸気で空気が乱れ、風景やものが揺らめいて見えること。光の屈折率の変化によって起こる現象で春に限ったものではないが、のどかな感じがするので春の季語としている。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
東の野にかぎろひの立つ見えて返り見すれば月かたぶきぬ 柿本人麻呂『万葉集』
【例句】
枯芝やややかげろふの一二寸
芭蕉「笈の小文」
糸遊に結びつきたる煙哉
芭蕉「雪まろげ」
入りかゝる日も糸ゆふの名残かな
芭蕉「初茄子」
丈六にかげろふ高し石の上
芭蕉「笈の小文」
かげろふの我肩にたつ紙子哉
芭蕉「伊達衣」
陽炎や柴胡の糸の薄曇
芭蕉「猿蓑」
野馬に子共あそばす狐哉
凡兆「猿蓑」
かげろふや墓より外に住ばかり
丈草「丈草発句集」
陽炎や名もしらぬ虫の白き飛
蕪村「蕪村句集」
かげろふや簣(あじか)に土をめづる人
蕪村「蕪村句集」
糸遊にほどける艸の葉先かな
白雄「白雄句集」
ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚
夏目漱石「漱石全集」
陽炎の草に移りし夕べかな
臼田亜浪「定本亜浪句集」
掛けられて陽炎となる蓑一つ
長谷川櫂「初雁」